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表と裏の狭間には 五話―光坂の体育祭―

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七月。
俺の通う光坂学園では体育祭がある。
………なんで夏休みを目前に控え、定期テストもあるこの時期に体育祭があるんだ。
まあ、文句を言っても仕方ないのも事実だ。
その体育祭に関して、先輩のコメントを頂くと、以下のようになった。
「うちの体育祭ねー………。毎年プログラムにハッキングかまして校歌斉唱をしっちゃかめっちゃかにする輩がいるのよねぇ………。」
「うちの体育祭は凄いぞ。特に…………ククッ、まあ見てのお楽しみだ。」
何か嫌な予感がひしひしとするのですが。
まあともあれ。体育祭はすぐそこまで迫っていた。

「という訳で、体育祭の出場種目を決めたいと思います!」
ある日のLHR(ロングホームルーム)。
学級委員――じゃなくて、体育祭実行委員が、そう提言した。
体育祭の出場種目………ねぇ。
そもそもこの学校の体育祭って、どんな競技があるんだ?
「えー、面倒なので片っ端から説明しますと、100m走、200m走、高飛びに幅跳び、1000mリレー、棒倒しに騎馬戦、1500m、2000m、二人三脚、障害、」
うん。大分まともな競技だな。
「………殺し合い?」
ぶっ!?
「あ、失礼しました。特別競技として、サバイバルゲームが内定したそうです。」
………なるほど。殺し合いだな、サバゲーは。
いやそこじゃない!
そもそもどうして体育祭でサバゲーなんかやるんだ!?
周囲を覗うと、クラスが騒然としていた。
『サバゲー!?』
『マジで!?学校でそんなことできるのか!?』
『よっしゃ燃えてきたぁあああああああ!!』
………男子は大はしゃぎだった。

結局、最後の一つのせいでクラスが騒然としてしまい、会議は次回に持ち越しとなった。
昼休み、俺はいつもゆりたちが駄弁っている談話室に向かった。
「どうも。」
入ると、そこにはいつも通り六人の人たちがいた。
「あ、久しぶり、紫苑君。」
ゆりたちは弁当を広げており、俺もその環の中に混ざって弁当を広げる。
「あれ?ゆりのそれって、学食のラーメンなんじゃ?」
「うん、そうよ?」
そうよ?じゃない!
どうしてこんな所に学食のラーメンが!?
「だって美味しいんだもん。」
「そういう問題じゃないでしょう!」
「私は特別なのよ。」
………。
「まあ、ゆりは学食のメニューが好きだからな。もう他の連中も慣れたし、この学園の名物風景みたいなもんだよ。」
そんな軽く流していいのかな!?
「まあ、輝の飯はもう慣れたけど。」
端的に説明する。
主食・チョココロネ、飲み物・アイスココア(500ml)、デザート・シュークリーム。
甘いもののオンパレードだった。
「ああ、チョココロネは完璧にネタっすよ。」
何のネタかさっぱり分からないんだが。
「ほら、昼休みは常にチョココロネ食ってるちっこくてオタクな女子高生がいるじゃないっすか。」
俺の目の前にいるのは小柄でオタクな男子高校生なんだが?
ちなみに輝はヘッドフォンを装備している。
……漏れ聞こえる音楽は、多分聞き耳を立てたら一瞬で『ソッチ側』に引きずり込まれるものだと思う。
「兄様のネタ発言はいつものことなの。理解出来ないネタもいつものことなの。」
「まあそうなんだけど。」
最近気付いたが、耀は輝のことを『兄様』と呼んでいる。煌のことは普通に煌と呼んでいるのだが。
「ヤッホウ紫苑。早速わっちと隣の部屋で『イイコト』しようよ。」
「なにが言いたいのかさっぱりだが取りあえず断る」
「……理子、少しうるさい。」
「いつも寝てるあんたが静かすぎるだけよ。」
「……目が、覚めてしまった。」
また寝てたのか、こいつは。
そして相変わらずの長ランだな。そもそもこの学校はブレザーのはずだが?
「……なんとなくです。それにこの学校の校則、実は『制服を着用すること』とは書いてありますが『指定した制服』とは書いてないのです。」
つまり制服であればなんでもいいと。
「え?そうだったんすか?帰ったら北高の制服買わなきゃじゃないっすか。」
あそこの制服を来て登校するつもりかお前は。
それよりも、だ。
「この学校の体育祭ってなにが目的なんだ!?体育祭でサバゲーって狂ってるだろ!」
俺の怒鳴り声に対し、ゆりは事も無げに答える。
「この学校では一種目だけ、生徒からの公募で決定されるのよ。それが今年はサバゲーだっただけよ。」
「…………まさかとは思うが、あんたらが手を回したんじゃないだろうな?」
場を包む沈黙。ああそうかい。
「……………。」

翌日。
俺はまさかの事態に巻き込まれていた。
その日はサバゲーの要項が公表されたのだが。
以下に掲載しよう。
日時:体育祭最終日
場所:市内全域
人数:各クラス男女一名ずつ
詳細:別途掲載
そこまでは良かった。
良かったのだが。
「えーでは、参加するメンバーを決めたいと思います。男子一名女子一名、まずは男子から!立候補する人、あるいは推薦する人!」
ここからが問題なのだ。
実行委員がそう声をかけた次の瞬間。
男子共が我先にと立候補するかと思いきや、一人の男子が手を挙げ、整然と、一つの意見を述べた。
「柊紫苑を、推薦します。」
次の瞬間、教室全体から、『賛成』『異議なし』『いいんじゃね?』といった意見が上がり始めた!!
はぁ!?
「ちょ、お前ら――」
「えー、では男子代表は柊ってことで、異論のある奴は?」
「あるよ!他ならぬ俺があるよ!却下だ!拒否する!」
『当事者は黙ってろ!』
「お前らがバカテスを読んでるのは良く分かったがそれをリアルで言うと何かおかしいだろ!!」
しかし俺の反論も多勢に無勢、結局数の暴力で押し切られてしまった。
えー。
こんなわけの分からないイベントに参加するの?俺。
「えー、では続いて女子のほう決めたいと思うんだが、誰か、立候補する人いる?」
オイ、女子のほうは推薦を受け付けないのか?
女子のほうは男子とは打って変わって、『だるーい』『アンタ出れば?』などとやる気のない意見ばかりが上がってくる。
ん?蓮華の様子が、何かおかしいと思う――
「あ、あのっ!」
唐突に、さっきまで俯いてぶるぶる震えていた蓮華が立ち上がった。
「なに?雅さん?」
「わっ、私、出ます!」
えー………なんか、更に意味不明になってきたんですけど。

その日の昼休み。俺はまた、いつもあいつらが溜まっている談話室を訪れた。
勢いよく扉を開き、続けざまに怒鳴る。
「あんたらいい加減に――」
しかし、そこに連中はいなかった。
無人だった。
「あれ?早く来すぎたかな?」
完璧に無人。
どこかに潜んでいる気配も無し。
強いて言えば、机の上にこちらに向けて配置されているカメ――
「カメラっ!?」
俺が困惑すると同時に、隣の部屋から爆笑が聞こえてきた。
…………。
「テメェらはぁああああああああああああああああああっ!!」
すぐさま隣の部屋を開け放つ。
するとそこにあったのは。。
机の上にはモニターが。
ソファの上には、笑い転げる、六人の男女の姿が。
「いい加減にしろあんたら!!どこまで人をおちょくれば気が済むんだ!?」
「ひゃははっははは!はははは!ごっ、ごめんごめん、でっでも、輝がっ…………ひゃはっ………どうしてもって……あははは!」