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夢の途中1(1-49)

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章タイトル: 第1章  プロローグ 2008・春


平成二十年五月下旬
林優一は札幌から在来線を乗り継ぎ、道央の藤野市に向かっていた
道央の五月
長かった冬の呪縛から解き放たれた木々や草花が一斉に芽吹き、短い春を謳歌する季節なのだ
本土はジメジメとした梅雨空に支配されつつあるが、此処北の大地に それは無縁だった。
特急を遣えばもっと早く到着する事は出来たが、優一は久しぶりに、車窓から見る「北国の春」を
満喫したいと思った。
車窓を走る道央の風景
濃い緑に覆われた平野、燃えるような若芽が風にそよぐ里山、陽を受けてキラキラと光る川面
遥か彼方に見ゆる高山の頂にはまだしっかりと万年の雪が残っている
けれど、全てが生き生きとしていた
優一にとって7年ぶりの北海道であった。
五十を幾つか越え、大阪の本社勤務も長くなり、
もう現場に出る事は無いのかと諦めていたのだが、
かつての同期、現在直属の上司である山本専務の計らいで、念願の現場復帰となった。
肩書きは【夢島建設・札幌支店・支店長付部長】である。
所属する札幌支店長は優一の3期後輩にあたる。
出世に全く欲のなかった優一は、入社以来ずっと現場を渡り歩き、大企業にありがちな【学閥・派閥】には一切組みせず、どの派閥に対しても『云いたい事を言う頑固者』と敬遠されていた。
その事を自分でも判りながら、何とか自分を貫き通せたのも、煙たい存在である半面、現場で鍛えた技術力・統率力で誰からも一目置かれていたからだ。
一匹オオカミ的立場で、何とか五十過ぎまでやってこれた事を、今では幸運だったと思っている。
優一にとって、これが最後の現場になるだろうと思う。
幾ら『まだ若いモンには負けない』と云う自負が在ったとしても、若い世代に任せない事にはその世代が育たない・・・
自分が持てる全てのモノを今回の現場で若い世代に引き継げればと考えていた。


林 優一 53歳

京都生まれだが両親も既に亡くなり、唯一の親族である妹も他県に嫁いだため、故郷に依せる身寄りは居ない。
家族は大阪に居る。
尤も頭に【元】が付くが・・・
優一が31歳の時、見合い結婚した5歳年下の妻・真知子とは5年前協議離婚していた。
直接の原因は真知子の浮気だった。
子供は大学2年回生になる娘・由美が一人。
優一の仕事は日本全国はもちろん、世界中で受注した土木工事の現場監督である。
四十半ばを過ぎても未だ地方回りをしていると云う事は、
優一が完全に出世街道の本流から外れている事を意味している。
その事に妻・真知子は不満を募らせ、母子家庭のような境遇を寂しく思い、つい出来心で【不貞】に走ってしまった。
妻は大阪で生花商を営む商人の娘で、今は十歳上の長男が手広く店を切り盛りしている。
結婚当初、裕福な家庭で伸び伸び華やかに育った妻は楽天的で、長期出張の多い夫を気に掛けるでなく、『亭主は元気で留守が良い』を長く実践していたのだが、年月を経るにつれて夫の心が自分では無い他の何処かにある事に気づき始めていた・・
夫は仕事以外では穏やかな性格で、
家に帰れば娘にも妻にもそれなりに愛情を注ぐ夫ではあった。
しかし、真知子には何処となく腑に落ちない【女の勘】のような想いが常に在って、実際興信所を遣って、夫の素行調査までやってみたのだが、何一つ不審な行動は見つからない・・
意を決して夫に直接聞いても見たが、真知子を納得させるような答えは聞けなかった・・












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章タイトル: 第2章 真知子    2003・夏


真知子は彼女が41歳の時、元々勤めていた『料理学校の講師』として社会復帰をした。
娘・由美が私立中学に上がった年だった。
この学園は真知子の母校でもあり、『小中高大の一環教育』を謳った名門私立学校だった。
娘が余程ドロップアウトしない限りは入試の心配をする必要もないと踏んだからだった。
反面、夫に加え愛娘からも手が離れ、
寂しさを紛らわすように真知子は精力的に仕事した。
結果、真知子は次第に職場の中で頭角を現し、
テレビの料理番組にまで出演するようになった。
当時40歳を少し過ぎたばかりの真知子ではあったが、
細身でスタイルも良く、長く美しい黒髪を持つ妻は
どうみても30代前半にしか見えなかった。
『彗星のごとく現れた美人料理家』に芸能界は、次々にレギュラーの料理番組を与え、料理本を執筆させ、
真知子は一躍時代の寵児となった。
そして真知子の活動範囲は『料理家』の域を大きく越えて、『タレント並のスケージュール』をこなし、TVのバラエティー番組にまで出演するようになっていく・・
しかし、華やかな芸能界の中でちやほやされても、真知子の孤独は増すばかりだった。
そんな生活が1年以上続いた43歳の時、番組で知り合った若い妻子持ちのプロデューサーと深い仲になる・・・
それを写真週刊誌にスクープされ、連日連夜お茶の間のゴシップ番組で【不倫料理家】と叩かれた。
真知子の『料理家』と云う業界に於けるポジションに対し、
『不倫』の二文字は致命的で、全ての番組からは降板し、
暫くなりを潜める他なかった・・
転々と日本各地のホテルを泊まり渡り、逃避行したハワイまで芸能レポーターの追跡にあった・・
約三か月間、娘・由美とも会う事が出来なかった。
妻・真知子が逃避行していた頃、優一は中国・広州に於ける架橋工事の真っ最中であったが、幸いにも日本に打ち合わせの為帰国していた。
自宅マンションにまで詰めかける無神経な報道陣に娘・由美を曝す訳にも行かず、優一は妻の実家を頼りに娘を預けた。
学校には事情を話し、暫く休学させる事となった。
自分は自宅マンションに残り、芸能レポーターの衆目集まる中、淡々と無言で職場と自宅を毎日往復した。
最初の内、連日マスコミは優一の姿をTVに流した。
それは優一が望む事でもあった。
その事で、世間の注目を自分に集め、娘や妻を守る事になればと思ったからだ。
案の定、マスコミの報道も一か月もすると下火になり、二か月もすると何処の局もこの話題を追う事は無かった・・

その頃から娘は復学し、妻の実家から通った。
名門私立学園である娘の学校も、この「不祥事」をPTAの
緊急議題に上げ、娘の処分について協議した。
しかし、本人が起こした事では無く、「不祥事」と云えど犯罪とは言い難い事件だけに、PTAの総意として『強制退学処分』とするには至らなかった。
本心としては『自主退学』してほしかったのであろうが、
『私は何も間違ってはいない』と云う娘の毅然とした意志で復学の道を選んだ。
この娘の性格は『頑固者』の父親の血を濃く受け継いだせいかも知れない・・
妻の実家の今や家長である義兄・増田泰三も、自分の妹が引き起こしたスキャンダルだけに、優一に大いに詫び、姪・由美の復学に影に回って大いに尽力したのだ。
妻・真知子は行方をくらませてから約三カ月後、実家に姿を現した・・
作品名:夢の途中1(1-49) 作家名:ef (エフ)