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死生学研究科

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「死生学研究科」
黒木 泪


登場人物
赤石 秋(アカイシ シュウ)
白井 綾華(シライ アヤカ)
境 汐也(サカイ ユウヤ)
森山 小太郎(モリヤマ コタロウ)
高見 嶺哉(タカミ レイヤ)
福島 目黒(フクシマ メグロ)
中野 学人(ナカノ ガクト)
学長(ガクチョウ)














シーン1

場所は昼食のテラス。赤石、白井、境が話している。

赤石「な、昨日のあれ見たかよ。」
境「あれって?」
赤石「ライブの中継だよ。すごかったんだぜ?」
境「ああ。見てないけど」
赤石「何で見ねえんだよ。超良かったのに。アヤは見たよな?」
白井「見てないよ。」
赤石「おいおい。俺は何のために二人に勧めたんだよ」
白井「知らないよ。」
境「見ようとはしたんだけど。」
赤石「見ようとしても見なきゃ意味ねーじゃん。」
境「まあ」
赤石「ホント損してるからな。人生損してるからな二人とも。」
白井「はいはい。それで誰のライブだったの?」
赤石「そこから!?つーか昨日ちゃんと俺の話聞いてた?」
白井「聞いてないわ。」
赤石「はっきり言った。わー、心折れるわー。」
白井「ポッキー並みね。」
赤石「じゃもう一回言うけど、今を輝くアイドルロボットのアキ★ルキがなんと明日テレビに出るんだぜって昨日言ったと思うんだけど。」
白井「アキルキ?」
赤石「歌って踊れるアイドロイドだよ。」
白井「知らない。」
赤石「マジかよ。この話題分かるやつやっと増えたと思ったのに。」
境「なあ、シュウ?M1ってヲタクそんなに少ないのか?」
赤石「少ないな。俺とメグロと小松と…」
白井「そういえば小松君って死んだよね?」
赤石「え?嘘?」
境「そうなのか?」
白井「あっいや3回生のだけど」
赤石「別人かよ。焦ったわ。」
境「最近なかったのに何でまた?」
白井「それは分からないけど、1週間ぐらい前に飛び下りだって。」
境「1週間も前か?」
白井「うん。私も友達に教えてもらっただけだから詳しくは分からないんだけど。」
境「そう。死学部のやつ?」
白井「うん。」
赤石「なんか妙だよな?まったく騒ぎになってないんだぜ?」
白井「そうだね。」
境「みんな慣れたからだろ?」
赤石「最高学年の俺らがまだ慣れてないんだから、それはないんじゃね?」
境「そう?俺は慣れたけど。」
赤石「あっ、そうなんだ。いやそれで面白い噂があってさ。」
白井「噂?」
赤石「ああ。学長が裏で糸引いてるんだって。」
白井「まさかそれは。」
赤石「いやいやマジだって。裏で何か工作してるって話。」
境「ホントかよ?」
赤石「どうだろうな。あくまで噂だからな。」
境「もしそれが本当なら…。」
赤石「本当なら?」
境「…大変だな。」
赤石「ああ。何でタメたんだよ?」
境「思うところがあってな。」
赤石「じゃあそれ言えよ。」
境「また今度。」
白井「学長が裏工作って、お奉行と忍者足してかける2ぐらい強くない?」
境「たとえが古いな。」
赤石「いやいや火影と将軍かけて足す2ぐらい強いぜ」
境「今変なもん足しただろ?」
赤石「え?」
境「足す2って何だよ。一体何が足されてるんだよそこに?」
赤石「戦闘力だよ。火影と将軍の戦闘力の掛け算じゃ学長には届かなかったから、こう無理矢理2足したんだよ分かるか?これでやっと合体した火影将軍デスガイザーと学長が互角の戦いを繰り広げられるっていう、ね?」
境「イタイわ。さっさとミスを認めろ。なあ、アヤ」
白井「ホント。そろそろ中二病は卒業して欲しいわ。」
赤石「わー厳しい。てかこれアヤから始めたよな?なんで俺だけ責められてんだよ。」
白井「元々はシュウから始めたでしょ?」
赤石「あっ確かに。なあ話変わるけどさ、アヤって研究テーマ決めれた?」
白井「ううん、まだ。今更また悩んじゃって。」
赤石「前言ってたやつあるじゃん?」
白井「なんかしっくりこなくて。」
赤石「院入ってもう3カ月過ぎたんだぜ。パッと決めりゃいいだろ?案外直感の方が当たってるもんだ。」
白井「うーん。分かんないよ。」
境「そっか。それで、シュウの方は順調なのか?」
赤石「俺か?俺もイマイチかな。前から言ってる意識論の実験やらせてもらってるんだけど。なんだかなあ」
境「5年目を迎えて2人ともスランプってわけか。」
白井「別にスランプってわけじゃ。」
赤石「まあな。はぁ。5年目か。もう4年経っちまったんだよなー。1回生の頃はもっと良かった。」
白井「何懐かしんでんの。脳みそが年取ったんじゃない?」
赤石「ばーか。昔を振り返ろうとすると脳は活性化すんだよ。」
白井「ふーん。」
赤石「あー。あの頃は俺も若かったなあー。」
白井「どう見てもじじ臭いけど」
赤石「新設の学部だったからさ。先輩いなくて超苦労したじゃん。でもなんか苦労した分、前に進めたみたいな感動がさ」
白井「絶対大学の方が苦労してるけどね。」
境「問題起こすやつ多かったからな。」
赤石「それはそうかもだけど。」
白井「学部の存続が危うい時期もあったよね?」
境「確かに。今も続いてるのが逆に不思議なくらいだよ。」
白井「ホント」
赤石「それは俺らの成果がちゃんと認められてさ」
境「あっ!時間過ぎてない!?」
赤石「えっ!?」
白井「嘘!?」
境「やば」
赤石「完全に遅刻じゃん。何で誰も気づかねーんだよ。」

赤石と白井と境が死生学棟に急いで行く。

暗転


シーン2

場所は中野研究室。森山、福島、高見、中野が座っている。高見はノートパソコンを使っている。

中野「それで日本の若者の自殺数が年々こう増加傾向にあることを背景にね。学長が2021年に初めて死学部をこの大学に作ったんだ。」
森山「へえ」
中野「それで今5年目を迎えてるわけだ。学長は8年前から死学部創設の構想を持っていらっしゃってだなー。それを叶えるために死生学を教えられる教授を集めに回ったり、国に補助金の要請を通させたりとなかなかに尽力されたんだ。」
高見「中野教授も結成当時に誘われた一人だ。」
森山「学長ってすごい方なんですね。」
福島「最近は妙な噂もあがってるけどねぇ」
森山「妙な噂?」
高見「おい福島。新人に聞かせるようなことじゃない。」
福島「別にただの噂っすよ。」
中野「まあそれはまた今度で。死生学ってのは今3つの分野に分かれてて、死学、美死学、死場学ってなってるんだ。あと死後学っていう死んだ後の世界を考える学問もあったんだけど、それはまあ廃れちゃって。だっていくら考えても結局分からないでしょ。あぁでも死後学は死学者全員にとっての永遠の課題ではあるね。」
高見「院生で研究してるやつも少なくない」
森山「そんなものどうやって研究するんですか?」
福島「心霊学、黒魔術、宗教とか」
高見「哲学、心理学、天文学もいたな」
中野「まあ方法は人それぞれだよ。それに、方法が無いなら自分で開拓するだけ。基本的に死生学って分野においては前例がある方が珍しいから。」
福島「やっかいなところに来ちゃいまいたねー森山氏?」
森山「ですかね。」
作品名:死生学研究科 作家名:黒木 泪