ARTIEICIALLY~第二号~
しばらくたって、神風が部屋へと戻ってきた。そして2人を起こした。
「話がある」
神風が真剣な顔をして言う。そんな中、琴音はまだ眠気が残っているようだ。目をこすりながらアクビをして、神風が連れていくままについていった。
こうして連れてこられたのはパソコンが大量にある部屋だった。薄暗く、パソコンの明かりだけのこの部屋はドア側以外の壁全てにパソコンの画面が貼られていた。そして、その部屋にはもう一人いた。タバコをくわえてパソコンの画面を見つめている。横顔しか見えないが若い男性だと思う。
「悠、連れてきたぞ」
悠と呼ばれた青年はくるりとイスを回してこちらを向いた。右目には眼帯がついていて、紫色の髪がすごい寝ぐせによってうねっている。
「…」
悠はイスから立ち上がり、よろよろしながらレオンへと近づくとジロジロと見はじめた。レオンはタバコの煙が目に染みるのか、嫌そうな顔をしている。
「なんだよお前…」
レオンが一言そういうと、悠は「これは失礼」と言って顔を離し、パソコンへと戻ってイスに座った。
「…2人はここに座りな」
神風が指名した所に琴音は素直に座った。レオンは仕方ないような顔をしながらイスに腰をかけた。神風はレオンの後ろに立って腕組みをしている。
「最初に、彼は柴田 悠。かなり優秀な情報係さ」
神風は得意げに柴田 悠を指差しながら言った。柴田は少し嫌そうな顔をすると、タバコを灰皿へと押し付けた。
「俺の自己紹介なんていいから、本題に入ろうぜ」
「そうだね」
「…男の方。お前、名前は?」
「…レオンだ」
レオンが柴田を睨みながら渋々答える。神風に続き、柴田も苦手のようだ。だからなのか、目もあわせようとする気配すらない。会話すら必要最低限しかしていない。
柴田はそんなレオンの様子を眺めながらため息をついた。
「…お前、自分の正体を自分の口から言ってもらおうじゃないか」
柴田はそう言って、またタバコを一本口にくわえた。今度は火をつけてないない。レオンがタバコを嫌がったからだろうか。しかしいつまで経ってもレオンは言おうとし無かった。
「言え」
柴田がイライラしてきている。神風は柴田をおさえるが、ニコチン切れだろうか。だとすると、柴田はそうとうヘビースモーカーだと思う。ニコチンが切れるのが早すぎる。
「…俺は」
やっとレオンが口を開きはじめた。重々しく低い声で話を続ける。
「俺は改造人間。闇政府のペットだ」
琴音だけ驚いたようにレオンを見た。神風と柴田はわかっていたように表情も変えず、反応すらしなかった。同時にレオンはそれだけを言うと黙り込んでしまった。悲しそうな悔しそうな顔でうつむいた。しばらく静かな重い時間が過ぎた。すると柴田は何かをつぶやいて、ニヤリと笑うとレオンの前髪をつかみ顔を無理やりあげさせた。
「お前さぁ、闇政府から逃げたくないか?」
突然のことにレオンは驚いたが、嫌な顔もせずただまっすぐ柴田の目をあわせて「やめたい」と確かに言った。柴田は手を離すとパソコンをいじりはじめた。そして正面にある一番大きな画面になにやらマークだけを映し出した。すると神風が後ろから説明をし出した。
「僕達は闇政府を追っている組織でね。まぁ組織と言っても個人的にメンバーを集めただけなんだけど」
神風がキーボードが乗っている机に座る。
「レオン君、君が入ってくれたら私達は助かるし君は逃げることが出来る。現に君は『やめたい』と言った。そして、鎖も自力でとってきた」
少しづつ口調が推理をするように、自分に言い聞かせるようにゆっくりになっている。レオンと柴田は神風の話を理解しているようだ、がしかし琴音は全く理解出来ていない。闇政府。ペット。改造人間。自分の住んでいた世界とは別の世界の話をされているような気分だった。
「レオン君はもちろん入ってくれるよね?」
「…はい」
珍しくレオンが神風の答えに応えた。それにちゃんと目もあわせている。睨むには程遠い、信頼しているかのような目だ。
「…琴音ちゃんは?どうする?」
「私は…」
正直言って何も考えてなかった。わけのわからないが限度をはるかに越していて、聞くことさえやめていた。そもそも私なんかが入っていいものではないと琴音は思う。しかしそれならば神風はわざわざ誘ってきたりしないと同じく思い、2つがごちゃごちゃに
なっていくのが自分でも分かるほどだった。
「琴音ちゃんは考えといて」
神風は優しい声でそういうと琴音だけをもとの部屋へ帰した。
作品名:ARTIEICIALLY~第二号~ 作家名:結城 あづさ