人間嫌いと教授の歌
嫌な予感は見事的中だった。網袋の人間は保健所のやつらで、クロとマーヤとミルを捕まえようと必死になっている。私の背筋に冷たいものが伝った。
「7だ! 7だ! 3だろ? 3に1足すと4だろ? そんでまた3だ! 7! 7! 7!」
教授が大きな声でそう喚き散らした。教授のその声を聞いたら体中に良く分んないけど力が満ち溢れてきた。
「クロ! マーヤ! ミル!」
私はお腹から声を出して3匹の名前を呼んだ。こんな大声を出したのは何年ぶりだろう? もしかすると人生で初めてかも。
私の声を聞きつけると3匹は軽やかに私の足元まで駆け寄ってきた。私はリュックを開いて3匹を中に押し込んだ。私のリュックには教科書なんて入ってない。学校に行っているフリをする為だけのただの袋。親に不登校がバレない為の精一杯のカモフラージュ。でもだからこそ3匹とも中に押し込める事が出来た。
「行け! 全ては7だ! 7! 7! 7! 7!」
教授の声に私は駆け出す。
うんっ! そうだね、教授! 私にも何となく分かるよ!
公園の端に乗り捨てられた自転車に乗り込むと、思いっきりペダルをこいだ。
背後に回った公園の方から騒然とした声が上がっている。知るもんか! 私は必死にペダルをこぐだけの自転車専用セクサロイドだ!
教授。教授。私は人間が大嫌い。でも教授の事だけは好きだよ。
神様。神様。どうか教授を守ってください。救ってください。だって教授はあんなにも毎日あなたを求めているんだから!
いつかまた教授に会えるよね? うん、会えるよ。だって世界は7で、神様は7で、教授は今年で63なんだもん!
必死にペダルをこぐ私の背中で猫がミャアと鳴いていた。
――了――