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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第六回・参】大菓の改心

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「お邪魔しましたー」
微妙にハモった挨拶と同時に玄関が開いて中島が出てきた
それに続いて南、坂田、阿部、本間が次々に出てくる
「…はぁ」
抱いていた鞄を肩に掛けて阿部が溜息をつくと本間が阿部の頭を撫でた
「何か悪かったなせっかくきてもらったのにさ」
京助がジャケットを羽織りながら言う
「いんや?別にいいさ~…てお前どっか行くの?」
南が靴の踵に指を入れて履き心地を調節している京助に聞いた
「あ~? ああ」
トトンと爪先と地面に当てて靴を履くと京助は顔を上げた
「緊那羅ー俺ちょっくら阿部送ってくるわ」
京助が家の中にそう言うのを聞いて阿部が驚く
「…え?」
そして思わず本間の方を見ると本間はにっこり笑って阿部の背中を叩いた
「京助やっさしー」
坂田が京助に抱きついた
「送って…って…いいの?」
肩に掛けた鞄の取っ手を握り締めて阿部が聞く
「お前も女だしな一応」
京助が笑って言った
「…最後のチャンス到来」
本間が言うと阿部が深呼吸した

「ラムちゃんのチョコおいしかったね」
除雪のせいでやっぱり細くなっている歩道を歩きながら阿部が言った
「あんだけ作りゃ上手くもなるわな」
京助がヘッと笑って言う
「足元気ィつけろよ」
除雪車が固めていった割と大きく堅い雪の塊がゴロゴロしている箇所を歩きながら京助が言った
「うん…」
交互に出される足にあわせて無造作に振られている京助の手を見ながら阿部が小さく返事をした
「京助って昔は早起きだったよね」
「は?」
阿部が唐突に言った一言に京助が足と止めて振り返った
「夏とかラジオ体操欠かさず行ってたじゃない?」
阿部も足を止めた
「…あ~…昔はな~…ってかどうしたよ急に昔話始めて」
再びゆっくりと京助が歩き出すと阿部が小走りで京助の隣に並んだ
「ううん何でもない。ただそうだったなぁって」
何気なく歩道を阿部に譲って自分は車道を歩く様にした京助が阿部を見る
「…変なヤツ」
鼻から白い息を吐いて京助が呟いた
「いっぱいトンボがいたっけ…」

カチッ
チャ~ララ~チャ~ラララ~チャ~ララ~ララ~…♪

正月町に毎度おなじみ【愛の鐘】が鳴り響いた
夏には夕焼け小焼けだったメロディーが冬には遠き山に日は落ちてに変わっているのには一体何人気付いただろう
【柴野ストアー】の立て看板のところで阿部が足を止めた
「ここでいいよありがと」
京助に笑顔を向けて阿部が言った
「そうか? …んじゃ気ぃつけて…」
「あ…京助!」
背中を向けた京助の名前を無意識のうちに呼んで阿部はハッとした
「何?」
振り返った京助を見て阿部は鞄の取っ手を強く握る
「あ…あのね…」
深呼吸した後阿部は鞄のファスナーをあけた
「手作りじゃないんだけど…お礼」
京助の目の前に差し出されたピンクの包み
「…爆弾?」
「チョコッ!!」
その包みを指差して京助が冗談を言うと阿部が怒鳴った
「いらないならあげないッ!」
真っ赤になりながら阿部が怒鳴る
「…サンキュ」
阿部の手から包みを取って京助が笑う
「…うん」
阿部の顔がほころんで笑顔になる
「じゃぁね」
軽く手を振って阿部が駆け出す
「コケんなよー!」
京助が後ろから叫ぶのを聞きながら阿部はなんだか嬉しくなってぎゅっと鞄を抱きしめた