表と裏の狭間には 三話―裏側の日常―
「そうですね!紫苑君、どこに行きたいんですか?」
「んー。ゲーセンでいいんじゃねーか?」
俺はそう言って、今日の放課後、久しぶりに予定を入れた。
「しっかし、日常ってのはえてして暇なものだな………。」
「そういうものでしょう。というか、暇に耐えられなくなって戦闘に身を投じるようになっては人間として終わりですよ。その場合傭兵として戦地へ赴く以外に選択肢はありません。」
「そんなものなのか。」
「あなたは退屈ではない非日常を知ってしまった。そこからどういう結論を下すかで、あなたの人生は大きく変わります。」
俺の人生ねぇ。
「退屈ではない非日常に身を投じるのか、退屈な日常を大切にするのか。先に言っておきます。我々の組織の中には、その選択に失敗し、壊れてしまわれた方もそれなりにおられます。あなたも気をつけてください。」
まあ、肝に銘じておくよ。
そしてまた夜。
………あれ?雫は?
家に戻ってからしばらく経ったが、というか夕食の時間になってからかなり経つのだが、雫が帰ってきていない。
あれ?あれ?あれ?
どういうこと?
……携帯にかけてみるか。
………………。
……………。
…………。
………。
……。
…。
出ないな……。
あれ?
かなり本気であっれぇ?
おかしいなぁ?
ちょっと待て。
色々と待て待て待て待て。
え?あれ?なんで?なぜに?
あっっっっっっっっっっっっっっっっっっれぇ?
この前銃を向けられた時以上にあっれぇ?
おかしいよ!?
えええええええ?
えええ?
まあ…………落ち着いて。
こういうときこそ落ち着かないと。
でもどうすれば?
携帯は繋がらない、どこにいるのかも分からない。
というかそもそも、まだ中学から帰宅してない。
と。
そんな風にパニックになっていると。
家のドアが開いた。
「ただいま~。」
!?
「雫!?どこに行ってたんだ!?」
「あ、お兄ちゃん。部活で話が盛り上がっちゃってさー。いやーもう皆で延々と話してたんだよ。」
……………なんだろう。この脱力感。
「雫………………。」
「なに?お兄ちゃん?」
「頼むから………電話の一つくらい入れてくれ………。」
「あ、忘れてた。ごめんね、お兄ちゃん。お詫びに、今夜はとっておきの料理作るから、許して?」
ねっ?とひたすら可愛く懇願する妹。
………なんというか、まあ。
これで怒る気を失ってしまう俺は、雫に対してとても甘いのかもしれない。
まあ、ともあれ。
俺の日常は、こんな感じだった。
続く
作品名:表と裏の狭間には 三話―裏側の日常― 作家名:零崎