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表と裏の狭間には 三話―裏側の日常―

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俺は柊紫苑。
光坂学園高等学校一年四組所属。
妹と二人暮らしをしている、世界に何ら恥じることの無いただの学生。
……だったのは、今年の四月半ばまでの話である。
四月半ば、俺は世界の裏側と出会った。
出会ってしまった。
俺は、単なる偶然によってアークという組織と出会い、それに入隊することを余儀なくされた。
あれから一ヶ月。
今は五月半ばだ。
あの日から今日までの日々を、ダイジェストで語ろう。

「これとこれとこれ、あとこれにもサインして。」
俺は渡された何枚かの書類にサインをしていた。
「何でこんなにサインしなきゃならないんだ?」
「そりゃぁ、命賭ける訳だし、守秘義務やら万が一の時のための誓約やら情報漏洩の際の責任だとか、色々あるのよ色々。」
そんなものか、と俺は納得し、サインしていった。
「さて。」
サインを終え、その書類をゆりに渡したところで、彼女は言った。
「これであなたも正式な構成員という訳なんだけどさ、うちの規則について何か質問はある?」
…………………。
「ありまくりだよ!?何で情報が漏れたら殺されるわけ!?」
「………………まあ、仕方ないんじゃない?消されるにしても最悪の場合だし、大抵は始末書と罰金で済むわよ。」
いや根本的な回答になってないし。
「…………まあ他にも色々あるんだけど、諦めるのが賢明なんだろうなぁ………。」
「賢明ね。ここの規則って、本当に昔からあるし、たまに本気で訳わからないものも混じってるのよね。」
……………。
「んで、これがあなたの端末よ。」
「端末?」
渡されたのは厚さ一センチほどの板だった。
「それはあたしたちアークの人間が使っている携帯端末。無線機にもなってるの。このICチップをそこのカートリッジに入れて。」
渡されたチップを差し込む。
「それで、そのボタンを押して、そうやってそう――」
言われるままに操作していく。
「うん。それでユーザー登録は完了。携帯と同じ要領で端末間の番号交換が出来るわよ。仕事の時はこれを使いなさいよ。これ使わないと情報の漏洩に繋がるかもだし。」
本当に厳しいな。ここの情報管理。
「仕事の話をしていいのはここだけね。仕事中の会話はこの端末しか使わないでね。あとロッカーはこの前案内した場所。空きロッカーに制服を入れておいたわ。明日からはここに来たらまず制服に着替えてね。」
はぁ……。
「えっと、後なにかあったかしら………。」
「おいゆり、班分けはどうした?」
「ああそうそう、忘れてた。」
班分け?
「うちでは人員をいくつかの班に分けて動かしてるの。あなたはあたしたちの班に決定したわ。おめでとう。」
はぁ……そうですか、としか言えない。
「じゃあ、端末の情報交換しておこうか。」

これがこの前アークの契約書にサインしたときの話である。
携帯の番号もしっかりと交換する羽目になった。
そして、その後俺は研修ということでトレーニングやら射撃練習やらに励んでいた。
この分だとどうやら俺は前線に放り込まれることになりそうだ。
五月のゴールデンウィークは雫と旅行に行った。まあその話はまたの機会に。
一ヶ月ほぼ毎日、放課後を研修に費やした甲斐あってか、ある程度なら正確に撃てるようになった。
まあ、それと実際に人を撃てるかというのは別の話だが。
何度か実戦にも参加した。
とはいっても、麻薬の売人の溜まり場を一つ潰しただけだったが。
アークでは戦闘時は常に発砲許可が下りているらしい。
場合によっては殺しても咎められないとか。
政界とのつながりもそうだが、警察関連のつながりでもあるのだろうか。
ちなみに、雫にはアークのことは話してない。
皆にも、雫には伝えないように頼んである。
雫はあのまま純粋に生きていくべきだ。
それは間違いなく俺のエゴだが、エゴで構わない。
あいつは裏側になんて触れるべきじゃないんだ。
雫の純粋な笑顔こそ、俺が今最も守りたいものなのだから。
っと。話が逸れた。
まあ俺が雫をどう思っているのかも、そのうち話すとしよう。

今、俺は授業が終わった後、アークの拠点に向かって歩いている。
ここ一ヶ月、放課後はいつもこうだ。
まあどうせ暇だから問題ないのだが。
雫には、部活に入っていると言ってある。
そのまま拠点へ。
エントランスをくぐり、四階へ。
階段を上る。
エレベーターは使ってはならないと言われた。
エレベーターはフェイクで、閉じ込められるらしい。
四階の、いつも俺たちが集まっている部屋へ。
その前に、ロッカールームに立ち寄って、制服に着替える。
勿論、アークの制服だ。
アークの制服は、黒の作業服だ。
特に特徴はないが、服の内外問わずやたらとポケットが多い。
ここに拳銃や道具、弾倉などを入れるようだ。
ここの拠点の部屋に入るときは、必ず扉の横の穴に端末を差し込まなければならないらしい。
ここのコンピューターで全室の入退出を記録しているのだとか。
さて。
俺は端末を差し込んでから、扉を開ける。
すると、既に俺以外の全員が揃っていた。
「遅かったわね。罰金徴収していいかしら?」
そういちゃもんをつけてくるのは、何から何まで救助を求めるサインを団名に掲げるかの団の長に告示している少女、ゆり。一応俺より一つ上らしい。
「言っておくけどあたしは喫茶店のおごり程度じゃ済まさないわよ。フルコースおごりよ、フルコース。」
鬼かお前は。
「やっほう、昨日ぶりだね紫苑君。」
そう俺に声をかけてきたのは、非常にレベルの高い体と、それに反してあどけなさの残る顔の持ち主、理子。俺と同じ学年らしい。
「ん?わっちの体をまじまじと見つめちゃってどうしたのかなー?言っておくけど今夜わっちは暇だぜ。」
何が言いたいのかさっぱりだが、一ヶ月も似たようなことを言われ続けたらいい加減慣れる。
「今夜暇って……だからどうしたのかって聞きたいの。」
多少特徴的な喋り方をしているのは小柄な美少女、耀。こいつも同い年。どう見ても年下だが。
「……私はどうせ誘うならお姉様のほうがいいの。」
……今の発言から察してくれ。ちなみにお姉様というのはゆりのことらしい。
「……騒がしいですね。眠いので少し静かにしてもらえませんか?」
そう発言したのは礼慈。制服の上も何故か異様に裾が長い。そして眠そうである。こいつも一年生。
「……少し、眠ります。」
本当に寝やがった、こいつ。
「お前は本当にいつも寝てるよな。ちゃんと夜寝てんのかよ。」
と指摘したのは輝。へらへらとした笑みと常につけているヘッドフォンが特徴の一年。今までの会話から激しくオタであることが判明している。
「シュークリームうめー。」
ついでに甘いもの好き。俺が見る限り大抵甘いものを食っているのだが……健康問題は大丈夫なのか?
「大丈夫だから生きてるんだろ。別に甘いものだけ食ってても栄養は偏ることなく取れるはずだぜ。きちんと作れば、だが。」
現実的な発言は煌。どこからどう見ても間違いようのない不良である。二年生で、実際学校でも不良として認識されているらしいが……。
「まあ、分かっててやってるんだからいいだろ。」
ということらしい。ゆりから『こいつだけは絶対に怒らせるな』と言われているのだが何故だ?