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表と裏の狭間には 二話―裏側との邂逅―

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翌日のことである。
昼休みに、俺は呼び出しを受けた。

昨日俺が遭遇した非常事態――たまたま発見した路地裏で銃口を向けられる――に対する俺の対応は、非常に簡単だった。
即ち。
「うわぁああああああああああっ!?」
悲鳴をあげて逃げ去る。
まあ一般的な対応である。
というか、銃口を向けられて冷静でいられる者など、普通はいないだろう。
……はっきり言って銃口を向けられて冷静でいられるような漫画や何かの主人公は人間じゃないと思う。
まあそんな俺の主張はさておき。
とにかく俺は逃げて、そのまま家で過ごして眠った。
そして翌日、いつも通りに登校し、いつも通りに真壁と蓮華の二人とわいわい過ごして、昼休み。

昼休みに、俺は呼び出しを受けた。
そう、こんな感じで。
『一年四組の柊紫苑君。一年四組の柊紫苑君。談話室10まで来てください。』
「…………?」
「紫苑。お前なんかしたのか?」
「するわけないだろ。」
してたまるか。入学早々、そんな呼び出されるような問題なんて。
「紫苑君、呼び出しを受けるようなことでも?」
「だからないから!」
とにかく、俺は出向くしかないだろう。

「………ったく、なんだってんだ?」
この学園には談話室というのがある。
図書館棟にある10の部屋で、多人数での自習などのために学校側が貸し出している。
さて。
図書館棟五階、一番奥にある談話室10。
扉をノックすると、
『どうぞ。』
すぐに返答が帰ってきたので、扉を開く。
するとそこには。
談話室の内装は大きなテーブル。
三人掛けのソファにが二つに、一人掛けのソファが二つ。
つまり八人用の部屋である。
その中で。
三人掛けのソファ二つに、三人ずつ、計六人の男女が座っている。
右側に三人の男子。
左側に三人の女子。
男子三人の容姿は以下の通り。
一番手前に座っているのは、優男のような穏やかな風貌の少年。へらへらという形容が最も近い笑みを浮かべていて、耳にはヘッドフォンがある。
その一つ奥には、長ランを纏った少年。表情には暗い影が差し、不健康そうな印象を抱かせる。
最も奥には体格のいい男子。おそらくは年上。座っていても体格のよさがわかる。しかし髪は金髪で制服は改造、首からは十字のアクセサリーを引っ提げており、見るからに不良っぽい。
続いて左側。
一番手前に座っているのは体格の小さい少女。体格はボブで、見るからに美少女。血色のいい表情からは健康そうな印象を受ける。
真ん中に座ってるのはスタイルのいい少女。制服の上からでも普通に分かる体のラインはかなりの高水準であるといえよう。そのスタイルとは対照的に、表情には純粋さとあどけなさが残る。
一番奥に座っているのは、ポニーテイルの少女。勝気そうなつり目、活発そうな表情、どれをとってもとある暴走女子校生団長に酷似する。……まさか本当に力を持ってたりしないだろうな?
「ん、来たわね。」
一番奥に座っていた少女が立ち上がった。
「あたしは楓ゆり。あなた、柊紫苑君で間違いないわね?」
ああ。確かに呼び出されたのは俺だが、呼んだのはあんたたちか?
「そうよ。あたしたちが呼んだの。あなた、今日暇?」
まあ暇といえば暇だな。
「そう。じゃ、放課後またここに来て。今呼んだのはそれだけ。じゃ。」
「そうか。」
そのまま俺はその部屋を後にした。
……歩いている途中で、すっかり向こうのペースに乗せられていることに気付いた。

「結局なんだったんだ………。」
「つまり、また放課後に呼び出しくらったと。」
ああ。
いや本当に俺何もしてないんだけどな……。
「まあいいじゃありませんか。教師ではなく生徒なんだし、問題があっての呼び出しじゃないかもしれませんよ?」
そうなのかな………?

という訳で放課後。
俺は言われたとおり、談話室10を訪れた。
扉を開ける。
「ん、来たわね。」
「まあ、一応。」
「よし。じゃあ行きましょ。」
「行くってどこへ?ここで話せばいいじゃん?」
ヘッドフォンの男子が言う。っていうか聞こえてんのかそれ。
「まあ別にここでもいいんだけど、やっぱり基地で話すのが手っ取り早いでしょ。それにここだと盗聴の危険も否めないし。」
「オイオイ、ここはオレたちが四六時中借りてる部屋だぜ。それにオレが毎回毎回チェックしてんだろうが。」
「それにしたって同じことよ。忍び込むチャンスはいくらでもあるし、煌(きら)が毎回チェックしてるって言っても見落としがあるかもしれない。この子にはこれから全部話す必要があるかも知れないんだし、最大限警戒しないと。情報が漏れたらあたしたちが狙われるのよ。」
「それは確かに得策ではありません。私からも移動を推奨します。」
「…………いいんじゃんないですか?どっちでも同じでしょ、そんなもん。どうせこの後基地に行くんですし、ご足労願いましょうよ。」
「チッ。まあいいか。」
オイオイちょっと待て。
今の非常に不穏当な会話はなんだ?
少なくとも高校生の会話じゃないだろう。
基地?盗聴?情報の漏洩?狙われる?
まだ入学して一月経ってないのに、俺の学園生活超展開ですか?
「という訳で。ついてきてくれるかしら?」
従うしかないようだった。

学校を出てから、しばらく歩いた。
地下街の入り口が近い、街のとある一角。
「ここは………。」
昨日俺が迷い込み、何者かに銃を向けられた場所。
………よく考えると、アレもモデルガンか何かだったのだろう。
現代日本で銃を向けられるとか、まず無いよな。
となるとああも大声をあげて逃げ去ったのは、つまりとんだ恥さらしってわけだ。
………死にたい。
「こっちよ。」
ゆりと名乗った少女は路地に入っていく。
他の面々も続く。
俺も促されて奥へ進む。
すると昨日と同じように、ビルがあった。
ゆりと名乗る少女はそのままビルに近づく。
「私よ。開けて頂戴。」
彼女がそう言うと、扉が開いた。
「来て。」
そのまま建物の中へ。
入り口は広々としたエントランス。清潔感のある空間だ。
もう一つガラス戸を抜けると、通路がいくつかに分かれており、部屋もかなりの数ある。
右手にエレベーター、左手に階段、奥には大きな扉がある。
ゆりたちはエレベーターでなく階段を使って上の階に移動しているので、俺もそれに習う。
二階。
三階。
そして四階。
どうやらここが最上階のようだ。
彼女たちは通路を進み、ある部屋の前で立ち止まった。
そして徐に懐からカードを取り出した。
厚さ一センチほどの分厚いカードである。
それを扉の横にある長方形の穴に差し込むと、『ピー』という音がした。
それから彼女は扉を開ける。
彼女たちはどんどん入っていく。
「何してるの?入って。」
………なんだ?これから何が始まるんだ?
俺が入ると、長ランの少年が扉を閉めた。
「さて。」
部屋の奥まで進んでいた彼女は、不意に振り返る。

「早速でなんだけど、あなた、入隊してくれないかしら?」

………それは、アレですか?とあるアニメの中村さんの真似ですか?
「………ゆりさん、いささか話が飛びすぎかと。これでは誰であっても話しについていけません。」
「それもそうね。」
彼女は考え直したようで、あらためて口を開く。