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折り紙の花束

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「せんせー、見て見て、お花ー」

「んー?」

 先生は話していた話を一旦止めて、ぼくの方を振り返った。
 先生と話をしていた奴が一瞬、疎まし気な目でぼくを見たが、ぼくは好きな先生へ一時も早く見つけた綺麗な花を見せたくて、先生の元へと駆け寄った。

「せんせー、お花ー、見て見てー」

 ぼくは先生の元へと駆け寄ると、さっき見つけた花を先生の方へと差し出した。
 先生は差し出された花を見て

「まぁ、綺麗なお花ね」

 と、ぼくの大好きな笑顔で笑ってくれた。
 ぼくは、先生の笑った顔が大好きだ。
 だから、先生にはもっと笑って欲しいんだ。

***

 先生にお花を渡し、ぼくは部屋の中で考えていた。

『先生にもっと喜んでもらえる事って無いかなぁ……』

 でも、もう幼稚園に生えている花は全部渡したしなぁ……。
 と、一人でうーん、うーんと頭を抱えて悩んでいた。

 ぼくがもっと大きかったなら、おこづかいとかもらってもっと珍しいお花を買えたかもしれない。
 いや、もしかしたらお花だけじゃなく、先生がもっと喜ぶような物を買えたかもしれない……。
 こういう時、ぼくはもっと大人になりたいと思う。
 大人なら先生と目を合わせられるくらいまで身長も高くなれるし、大人なら先生に「好きだ」って言っても冗談に扱われないかもしれない。
 そして何より大人なら、ぼくはきっと先生を幸せに出来る。
 けれど、ぼくはどうやってもやっぱり幼稚園児で。
 ぼくが先生にしてあげる事なんて限られてくるんだ。

「よしっ!!」

僕は下を向いていた顔を上げ、立ち上がった。

「ぼくは、ぼくに出来ることをしてせんせいに喜んでもらおうっ!!」

 決意を決め、教室の後ろのみんなが書いた絵を見ながらぼくは宣言した。
 周りの子達は一瞬だけぼくを見たが、みんなすぐに自分の世界に入って行った。
 しかし……

「でも……せんせいは、ぼくが何をしたら喜んでくれるんだろう……」

 宣言したはいいが、ぼくは何をしたらよいか分からずに、すぐ下を向いた。
 すると、近くで友達の女の子が綺麗な色の折り紙を折っているのを見かけた。
 それを見て僕は一つの作戦を思いついた。

「そうだっ!!」

 その作戦を思いつくと、ぼくはすぐに友達の女の子の元へと寄ってった。

「ねぇ、おりがみ教えて?」

***

 女の子に折り紙をちょっとだけ教えてもらったぼくは、手に折り紙で出来たピンクのチューリップを持っていた。

「わぁ、すごく上手にできたねー」

女の子はニコニコ笑いながら、ぼくのチューリップを褒めてくれた。
 ぼくは女の子のその笑顔に不覚にもドキッとしたが、すぐに頭を振った。
 ダメだ。ぼくには先生がいるんだ。
 そして女の子に向き直ると

「教えてくれてありがとね」

とだけ言って、その女の子の元から逃げ去った。

***

女の子にチューリップの折り方を教えてもらったぼくは、大好きな先生の元に行って折り紙を貰うことにした。

「せんせー、おりがみちょうだいー」

 ぼくの声に気付いた先生は、ぼくの方を見て

「あら、折り紙? 珍しいね、何を作るの?」

 と、聞いた。
 ぼくは口から本当の事が出ないように気をつけながら

「せんせーにはひみつー」

 と言った。

「あらら。先生には秘密なの? 気になるなぁー」

 と、先生は返しながら折り紙の箱を手に取った。
 そして

「何色の折り紙が欲しいのかな?」

 と、ぼく達いたずらっ子のような顔で聞いてきた。
 それにぼくは

「んー、とね。赤とかピンクとか、オレンジとか……明るい色っ!!」

と、勢いをつけて言った。

「そっか、何を作るのか楽しみだね」

 と、言いながら先生は微笑みながら折り紙を何枚か渡してくれた。
ぼくはそれを受け取り、

「で、でも別にこれはぼくがじぶんで折るんだからねっ!! せんせーは関係無いんだもん!!」

 と、言って先生の元から逃げるように走って立ち去った。

***

 先生の元から走って逃げて、部屋の隅っこでぼくは折り紙を折った。
 折り紙なんてあんまり折った事のないぼくだから、折りながらちょっと失敗しちゃって凄く綺麗に、と言う風にはならなかったけれどチューリップの形には折れて色々な色のチューリップが出来上がった。
そして、近くでまだ折り紙をしていた女の子に青色の折り紙を貰って、それにペタペタと折ったチューリップを張り付けていった。
最後の仕上げとして、チューリップの下に緑色のクレヨンで線を引いたら折り紙で作ったチューリップの花束が出来上がった。

「できたーっ!!」

 出来上がった花束を見て、ぼくは両手をあげ後ろに倒れこんだ。
 後は、先生にこれを渡すだけだ。

 しばらく倒れこんだ後、ぼくは花束を手に持ち先生を探しに向かった。

***

 ぼくは花束を持ちながら、先生を探して園内を歩いていた。
 時々手の中の花束を見ては、先生喜んでくれるかなー、とか笑って受け取ってくれるかなーとか花束を渡した時の先生の様子を思い浮かべながら笑ってしまう。
 そして、外の遊具で別の子と遊んでいる先生を見つけぼくは駆け寄ろうとした。
 が、そんなぼくの前にふいっと現れた奴がいた。
 そいつは今日ぼくが先生にお花を渡した時に先生と話していた奴だった。
 奴は幼稚園のガキ大将のような存在で、ぼくと同じく先生の事が好きだった。

「な、なんか用?」

 ぼくは恐る恐るそいつに話しかけた。
 奴はぼくを見て、ぼくの手元の花束へ目を移すと

「それ、せんせいにやるのか」

 と言った。
 それは質問のようで、質問ではなかった。
 ただ、確認するために聞いただけ、と言うような感じで。

「うん、そうだけど……」

 ぼくは手に持った花束に目をやって答えた。
 すると奴はずかずかと近づいてきて、ぼくの花束を奪い取った。

「あっ……!!」

そして、ぼくが何か反撃をする前に花束を地面に落とすと外履き用の靴で花束を踏みつけた。

「……っ!! なにするんだよっ!!」

 ぼくは珍しく大きな声でそう言った。
 周りで遊んでいたみんなもぼく達の方を一斉に見た。
 奴は一気に集まった視線を感じてさっさとどこかへ走り去って行った。
 ぼくがそっとせんせいの方を見たら、せんせいはぼくの元へ駆け寄ってきた。

「大丈夫? どうしたの?」

 ぼくはそんな先生の問いかけに答えずに地面に落ちて汚れた花束を手に取ると、ガキ大将と同じように先生の元から走って逃げた。

***

 ぼくは先生の元から逃げて、幼稚園の端っこの方で汚された花束を見ていた。
 花束は破けたり壊れたりはしていないものの、土や汚れが付いていてあまり綺麗とは呼べない状態になっていた。

『こんなの……せんせいにわたせない……』

ぼくは花束を見つめたまま溜息をついた。
 そして近くにあるゴミ箱を見つめ、捨てようか悩んでいた。

『せっかく……せんせいのために作ったのになぁ……』

 そこまで考えたら何だか悲しくなってきて視界がぼやけてきた。
 どんどん視界が霞んでいき、今にも涙がこぼれ落ちるという時後ろから声をかけられた。
作品名:折り紙の花束 作家名:鈴音