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無題Ⅱ~神に愛された街~

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「二人とも遅い・・・あら、なんだもう着替え終えてるんじゃない」

着替え終えていなかったらどうするつもりだったのか・・・マリィはお構いなしに部屋に入ってくると、二人を頭の先からつま先まで見回す。

「うんうん!私の思った通り、似合ってるじゃない!」

二人を交互に見て、満足げに頷いたマリィは、やはり上機嫌だ。

「今回のはすごいわよー。なんと、服が治癒術で直るの!怪我したときなんかに一緒に服も直せるってわけ!」
「それはすごいな」

マリィの説明に鬨も素直に驚いて、自分の服を引っ張る。

「そうなの、最近出回り始めたんだけど、布に魔力が練り込んであって、それが術に反応して直るんですって!便利になったわよね〜」
「そっか、医術系だけは禁忌になってないもンな。それならこの街から出ても使える」

「そういうことよ♪」と嬉しそうに言ったマリィは、「あ、でも」と付け足す。

「直るのにも限度はあるわよ?あくまで直るのは破れたとかほつれたとか程度だから、大きく布が無くなったり燃えたりなんかすると無理ね。素直に新しい服買いなさいな」
「なンだ、それは直ンないのか」

少しがっかりした様子で言うヴェクサに、むっ、となったマリィが言う。

「この布はすごく丈夫だし、【火竜】の炎でも燃えないようになってるの。だから直す必要なんてそうそう無いことなのよ?」
「そうなのか?」
「そうなの!」

力説するマリィに、ヴェクサも頬を掻きながら答える。

「そもそも服というのはね・・・」

とさらに語りだしたマリィに、鬨が口をはさむ。

「マリィ、すまないが話しはまた今度。依頼を済ましに行かなければ」
「あぁ、そうだったわね」

少し残念そうに言ったマリィだったが、すぐにいつもの気丈な表情にもどり、鬨の肩に片手を置いて言う。

「しっかりやりなさいよ、鬨」
「言われなくてもやるさ」
「ふふ、それもそうね!」

にっこりと笑って、マリィは鬨の肩から手を離した。

「さ、急いでるんならさっさと行った行った!!」

言って、二人の背後に回るとぐいぐいと二人を押して入口まで連れて行く。
抵抗していないと言っても、マリィの腕の強さに驚きながら押されるまま店の外にでる。

「二人の新たな旅立ちに、幸あらんことを!いってらっしゃい!!」

にっこりと笑いながら、手を振るマリィに、一人は笑い返し、一人はいつも通りに。

「いってきます」

朝日が昇りきった空の下、店に背を向けて歩き出した。
作品名:無題Ⅱ~神に愛された街~ 作家名:渡鳥