無題Ⅱ~神に愛された街~
Episode.10 手紙
「あ、そうだ鬨」
宿について、お互いのベッドに腰を下ろして一息ついた時、ふと思い出したようにヴェクサが声を上げた。
「ルークスが鬨に渡せって」
「?」
差し出されたのは一通の手紙だった。
手紙の差出人は確かにルークスからで、蝋封のしてあるそれからは嫌な予感しかしない。
「ちゃんと読むようにってさ」
「・・・わかってる」
嫌々ながらも手紙を開く鬨に、ヴェクサは興味深々ながらも鬨が読み終わるのを待つ。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・なンて?」
長い沈黙の後、鬨が手紙を封筒にしまうのを見ながら声をかける。
「・・・・・ヴェクサ、明日早朝にこの街を発つ」
「は!?」
「『依頼』だ」
「い、依頼・・・?」
無言で差し出された手紙を受け取って、手紙と鬨とを交互に見た後、恐る恐る手紙を開く。
作品名:無題Ⅱ~神に愛された街~ 作家名:渡鳥