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無題Ⅱ~神に愛された街~

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なんとか腕は放してもらったが、ヴェクサはこの少女が一体誰で、何の目的があるのかまったくわからないのだ。
先ほど聞いてみたところ、「あなたはアノヒトのお客様だから」とよくわからないことを返された。一応質問すれば返してくれるが、そのような調子であまりこれといった収穫はないまま今に至っている。

「・・・・そういえば、あンた名前は?」

今更過ぎるような気がするその質問に、しかし少女は別にそんなことは気にしていない様子で、半分振り向いて止まった。

「・・・・・・・・」

じっ・・・っと見てくるその様子に、鬨のある言葉を思い出す。

―――・・・人に名乗らせる時は自分から名乗る。常識だろ?

たしか、ミアチェに居た時だ。いつだったかそんなことを言っていた。
・・・これは、つまりそう言うことなのだろうか・・・?

「・・・俺はヴェクサだ」
「・・・・エイル・・・エイル・ウィルディア」

エイル、と名乗ったその少女は、自分の名前を名乗ったかと思うとすぐに体を元に戻して歩き出してしまう。
それに少し遅れて歩き出したヴェクサは、ある疑問を口にする。

「・・・ウィルディア・・・?」

この病院の名前はたしかウィルディアス総合病院だ。偶然なのだろうかと思ったが、一応前を行くエイルに聞く。

「・・・・・・・ここ」

しかし、エイルはその質問に答える事はなく、ある部屋の扉の前で止まる。

ちなみにここは最上階だ。
なぜこんなにもあっさりと着いているのかというと、病院内にあった乗り物のようなものに乗って来たからである。
青白く光る簡易な魔方陣が描かれていたそれは、あっという間に二人を最上階へと誘いた。
―――ちなみに、鬨はこれの存在に気づいてはいたが、鬨がその乗り物の前を通った時はその魔方陣に罠が仕掛けられており、乗れなかったのだ。・・・哀れ。

エイルが鍵の掛けられていなかった扉を開けると、少女が静かにしていろと言う風に立てた人差し指を口の前に持っていく。そして扉の中に静かに入っていった。
ヴェクサは何かよくわからなかったが、エイルの言う通り、なるべく静かにしておく。

「・・・・ここは?」
「・・・・・・・・」

無言で渡された透明なガラスのコップに、流石に理解が追い付かず、クエスチョンマークが頭の中を飛び交う。

「こう」

コップをある壁に立てて、片耳をコップの底にくっつけるエイルにならって、戸惑いながらもヴェクサもエイルの真似をする。

こうして、二人揃って隣の部屋―――今まさに鬨とルークスが会話をしている部屋の盗聴を始めたのだった。


作品名:無題Ⅱ~神に愛された街~ 作家名:渡鳥