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小石 勝介
小石 勝介
novelistID. 28815
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金色の鷲子

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 皆その場に座り込んでいる。火が治まらない以上弁天島を動くこともできない。甲賀衆が常備の非常食である飢渇丸を配った。一日三粒飲めば心力衰えることなしと呼ばれている。朝鮮人参のほかにもユキノシタやカンゾウ、ヤマイモなどの滋養分の強い野草が含まれており、製薬技術に長けた甲賀忍者の面目を大いに施す丸薬であった。
 腹が満たされたせいか、皆の顔にやっと安堵の色が差してきた。
「ちんちくりん………」
 鷹の、急に成長して体に合わなくなった着物に気づいた鈴が、笑った。しかし、以前のような刺々しさが感じられないのは鷹の思い過ごしだろうか。傍らに座っている裏柳生も甲賀衆からも笑いが零れた。一番大きな声で笑っているのは菊之介のようだ。
 菊之介が袴を引っ張ってみたが、鷹の脹脛が不自然に隠れない。これには鷹も苦笑して返すしかなかった。そして、笑いながら思った。自分の心の中にまだ人間と関わっていたいと思う気持ちがある内は、きっと成長しないのだろうと………。
――やっぱ、おいらは半人前だ。そのうちお鈴ちゃんの方が年上になっちまうんだろうな。もっと口が悪くなりそうだ。
 鷹はそっと水鳥へ向かって話しかけた。
 
 振袖火事とも呼ばれる明暦の大火は、翌々日の一月二十日まで鎮火せず江戸の大半を焼失した。延焼面積、死者共に江戸期最大で死者は諸説あるが三万から十万人と記録されている。江戸城外堀以内のほぼ全域、天守閣を含む江戸城や多数の大名屋敷、市街地の大半が延焼したが、江戸城天守閣はこれ以後、再建されなかったという。





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作品名:金色の鷲子 作家名:小石 勝介