WHITE BOOK
想楽は階段に隠れたまま、耳を澄ませた。遠い場所からだが、大声を出す犯人側の声だけは聞き取ることができた。
「おい、本当にこれで全部なのか?」
1人は少し高めの男性の声。
「そんなことないだろう!」
もう1人は低く重みのある声。
「何度使用状況見ても1人足りないわよ。まさかとは思うけど、逃がしたんじゃない?」
最後の1人は女性の声だ。
もちろん、どの声がどの覆面のものかは分かるはずがない。ただ、女の発言から、この建物の中にいるはずの人数に1人足りていないことが分かった。必然的に、それが想楽自身であることも。
背中を冷や汗が流れていった。
今建物内にいて、自由に行動できるのは3人の覆面――もちろん、他に仲間がいたら彼らも――と、想楽だけのはず。
見つかったら、きっとそこで終わり。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ