WHITE BOOK
一番前の出入り口から電車を降りた。
この時間だと駅のホームも空いている。
降りた場所から一番近い場所にあるカップベンダーでブラック無糖のコーヒーを飲むのも、もはや彼女の日課だ。
通学かばんから財布と、白地に桜色の水玉が描かれたマグカップを取り出す。マイカップがあると少し安くなるのだ。
毎日飲むからと100円均一で買ったものだが、今ではすっかりお気に入りで、これも1年と少しの付き合いである。
指定された場所にカップをセットし、小銭を入れてオリジナルブレンドのブラックコーヒーのボタンを押した。
熱々のコーヒーがカップに注がれていく。
それを眺めていると、ふいに背中側から声をかけられた。
「あなたが、サクラギ ソラさん?」
はきはきとしたソプラノで名前を呼ばれて、あわてて振り向いた。
そこには、白いローブを身にまとった少女が立っていた。真夏だというのにしっかりとフードをかぶり、長い袖からは手が顔を出すこともない。着丈も長く、くるぶしまでローブに隠された少女の背丈は、彼女とおおかた同じか少し低いくらい。フードから顔を覗かせる髪の色は、漫画の世界でしか見られないような鮮やかなブルーだ。
「そうですけど……。」
言った彼女の声と、ベンダーがコーヒーを注ぎ終えた合図が重なった。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ