WHITE BOOK
扉の向こうに広がる世界は。
最初に目についたものは、左側にある大きな箱だった。一瞬用途が分からなかったが、すぐにそれが冷蔵庫であると気付く。業務用の大きいものが2台並べてある向かい、想楽から見て右側に、これまた大きな作業台。そのさらに向こうの壁際にある大きなオーブン。そして、その前に立っている、白いコックスーツに身を包んだ男性。ミトンをつけて、オーブン皿を取り出そうとしているその状態で想楽を見つけた彼は、しばらくそのまま動かなかった。
「あのー……」
想楽の声で我に返る。そして、想楽に理解できる言葉で言った。
「あぁ、姫様のお客さんだったね。待ってな、今呼んでくるから。」
彼は手際よくオーブン皿を専用のラックに移していく。その後ろ姿を、ドアを開けたときの位置で見ている想楽。
やがてオーブン皿がすべて取り出されると、彼はそそくさと正面の扉から出ていった。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ