WHITE BOOK
睦月だとか如月だとかの旧暦にも、そんな呼び方をする月はない。ひらがな混じりで、想楽に読める文字で書かれていたことからしてもこれは想楽の母国、明国の言語であり、そうなると外国で使われているものではなさそうだ。
「愛の月って、まさかこの世界の暦?明国で言うところのいつくらいになるの?」
抱えていた本に問いかけ、開いた。
《愛の月はepochで使われている「新暦」の月のひとつであり、想楽様の世界で言うところの6月を示します。本日は愛の月2日になります。》
「新暦……」
口の中でつぶやくと、心の中で異世界のその言葉が暴れまわる。これまでにないほど興奮しているのが、自分でも分かるほどだった。
胸に手のひらを当てる。心の鐘はいつもよりずっと速い。
「私、本当に異世界に来たんだ……!」
確信に変わったその思いのつむいだ言葉がひどく落ち着いていることに、想楽自身が一番驚いていた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ