WHITE BOOK
牛乳でパンを飲み込んだりぼんが、想楽に言う。
「やっぱり、白本によって使える白本術は違うみたいだね。」
「あ、そうなの?」
「うん、昨日想楽お姉ちゃんが教わってた清浄治療は、ハイドランジアじゃ変換できないって言ってたよ。」
白本の精にも得意不得意がある、ということだろう。エリカを本に戻して聞いてみる。
《以前、『純粋火炎には生命を持たない物質を破壊する能力はない』と言いましたね。》
「うん、そうだったね。……でも、あれ?」
初めてりぼんが白本術を使ったときのことを思い返してみる。ハイドランジアを用いてりぼんが放った純粋火炎で、的は完全に消失したはずだ。
《それは、純粋火炎が白本乃精によって効果が若干変わるからです。我は生命を持たない物質を破壊する全ての白本術を変換することが出来ません。ハイドランジアが変換するものには破壊能力があった、ということですね。》
言うなれば、エリカは白本の精の中では補助を担当する僧侶のような存在なのだろう。
「それで『慈愛乃闘神』なんだね。」
戦いの中に身を置きながらも、傷付くことを許さない闘神(マルス)。破壊能力を持たないエリカを表現するには適切な言葉といえる。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ