WHITE BOOK
「国境を越えたので、ここからは少しゆっくり行きますね。」
頼斗が徐々にスピードを落としていく。出発からおよそ10分、ミルリーフ国に入ったようだ。
気付けば窓の外はもう夕日に染まっていた。高いビルは姿を消し、カラフルな色の屋根が並んでいる。道路はアスファルトで舗装されてはいるものの、車2台がぎりぎりすれ違える程度の広さしかない。リバティアホープ地区を都会と呼ぶなら、ここは田舎と呼んでも差し支えないだろう。
肌の色の違う4人の女性の井戸端会議や、公園にある像――おそらく、ファルシア教の女神リンダの像――を手入れしている男の人を見ると、このあたりは本当にファルシア教を信仰している共生主義の人が多いんだろうな、と感じる。では、あのフィアル達は聖族主義とでも呼ぶのだろうか。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ