WHITE BOOK
そういえば、と想楽は自分のかばんをあさり始めた。
「今朝、駅で青い髪の女の子に会ってね。」
「青い?」
きょとんとする美姫。
「青っぽいとか、ウィッグとかじゃなくて?」
かばんの中から、駅で少女に渡された白い本を引っ張り出す。
「フード被ってたからよく分からなかったんだけど、確かにあれは青かったよ。で、どうも一方的に私のこと知ってたらしくて、この本を渡されて、何の説明もなしに読んでほしいとだけ言ってどこか行っちゃったんだけど。」
本を美姫に渡すと、美姫は表紙に書いてある想楽の名前を見つける。それから、ぱらぱらとページを繰ってみるが、相変わらず真っ白だった。
「何も書いてないね。でも、表紙には想楽の名前が書いてあるよ?」
「うん、そうなんだけど……実は、」
一瞬言うのをためらったが、相手は自分の同類とも言える美姫だ。相談してもどうにもならないだろうが、話してみる価値はあるだろう。
「渡された時は、その名前もなかったんだ。」
「え?」
円い目をさらに円くした美姫は、もう一度表紙の名前に視線を落とす。
印刷したかのような、きれいな明朝体で書かれた想楽の名前。渡された時になくて、想楽が書いたわけでもない。となれば……
「この本、もしかしたら魔法の本かもよ?」
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ