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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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あやかしの棲む家

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 静かな笑みを浮かべ、母はこの部屋を早々に後にした。
 残された姉と妹。
 緊張感が部屋を満たし、美花は息苦しさを感じた。
 ゆっくりと美咲が立ち上がった。
「わたしに付いておいでなさい、屋敷の中を案内して差し上げますわ」
「はい、お姉さま」
 同じ声音。同じ顔。しかし、同じ人間ではない。
 この姉妹はまるで朝と夜。
 夜はその闇の中に何を隠すのか?
 美咲の微笑みは昏い陰を含んでいた。
「家の者にはもう会ったかしら?」
「菊乃さん以外にもお二人とすれ違いましたが、お名前までは聞く時間がなくて」
「すれ違った二人には何かされませんでしたこと?」
「いいえ、会ったのはたぶんわたしと同い年くらいのお手伝いさんと、その方が追いかけていた小さな女の子でした。お二人とも悪い方には見えませんでしたけど?」
「それは侍女の瑤子[ようこ]と、我が家で預かっている?るりあ?ね。会ったのがその二人でよかったわ。この屋敷にはわたしたちに危害を加えるモノも多いから」
 危害を加えるモノ?
 わたしたちとは誰を示す言葉のなのか?
 それ以外にモノたちはいったい誰なのか?
 怖くて美花が問うことができずにいると、不気味に美咲は嗤った。
「目に見えるモノが全てではないわ。この屋敷は昔から怨念に血塗られているらしいから」
 眼を剥いた美咲は狂気の相を浮かべながら嗤った。今まででもっともおぞましい表情。
 背筋が凍りつく思いを美花はした。
 壊れている。
 ――貴女は本当にわたしの姉なのですか?
 それはまるで禁忌の問いかけ。口に出すことは恐ろしい。
 もしも?肯定?されてしまったら……。
 思い描いていた世界。
 思い描いていた姉の存在。
 全てが音を立てて崩れそうだった。
 その場に立ち尽くしていた美花に美咲が優しく微笑みかけた。
「どうしたの、行きましょう?」
 その笑みはまるで別人のようだった。