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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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あやかしの棲む家

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 ライターの火を灯す。
 遠くまでは暗くて見通せないが、屋根裏は思ったよりも広かった。屋根も高く立って歩けるくらいだ。
 足下には埃が溜まっている。
 暗がりで何があるのかわからないので慎重に歩く。足下だけでなく、頭も気をつけなくては
いつ梁にぶつかるかわからない。
 少しずつ目が慣れてきたが、それでもライダーだけの灯りでは心許ない。
 驚くべき物を見つけて、出そうになった言葉を引っ込めた。
 そこにあったの部屋だった。いや、この屋根裏自体が巨大な部屋だったのかもしれない。
 質素ではあるが家具一式が揃っている。どこれも埃を被っていて、長らく使われていないことは明らかだ。
 ありがたいことにまだ使えそうな蝋燭もあった。すぐにライターから火を移した。
 蝋燭に火を付けると、先ほどよりも見通しがよくなり、小さな雨戸を見つけることができた。
 雨戸に手を掛けるがなかなか開かない。
「くっ……この……っ!!」
 勢いよく開いた雨戸。全体重を掛けて開けようとしたため、開いた反動で克哉は転んでしまった。
 屋根裏に響いた大きな音。
 克哉は身の凍る思いをした。
 今さら息を潜めるが、鳴ってしまった音は消すことができない。
 すぐに屋根裏に誰か上がって来やしないか肝を冷やす。
 誰にも気づかれていないことを祈るばかりだ。
 仕方がないので克哉は気を取り直すことにした。この屋敷のどこにいても気は休まらないのだ。
 雨戸を開けるとさらに屋根裏は明るくなった。
 息を止めて椅子に乗った埃を静かに払う。山盛りの埃を手から落としてから椅子に腰掛けた。
 自然と溜息が出る。
 ズボンから出した煙草の箱は潰れてしまっている。残りは三本。いったん口に運んでから箱に戻そうとしたが、やはり口に咥えることにした。
 ライターで煙草に火を付ける。
 ふかした煙を雨戸の先に見える空に向かって噴き出した。
 安堵と余裕が生まれた。
 煙草を吸い終えたが灰皿がなかった。
 まさか灰皿なんてないだろうと探してみると、別の物を見つけてしまった。
 机の隅に黒く焼け焦げた箇所があったのだ。それは何度も熱源を押しつけた点の集合体で、まさかと思いながらも克哉はそこに煙草を押しつけてみた。すると同じような焦げ痕ができたではないか。
 煙草を消すとちょうど手の届くところにごみ箱があった。空だった中身に煙草を放り投げる。
 屋根裏に棲んでいた住人に思いを馳せてみる。
 もしも煙草を吸う人物だったとしたら、灰皿くらい用意しろと思うところだ。不精者か何かだったのだろうかと思いながら、克哉は自らの顎に生えた無精髭を撫でた。
 屋根裏の住人の人物像を探るにはまだ情報が少ない。
 さっそく家具などを調べて見ることにした。
 机には幾つもの引き出しがあった。全部鍵穴がついている。さらに鍵も掛かっていた。
 箪笥も調べて見よう。
 こちらも鍵穴があった。そして、どれも開かない。
 こんな場所、滅多に人の来る場所ではない。屋根裏なんかにある家具に鍵など必要だろうか。
 それほど重要な物が中に入っている――としても、この全部にだろうか。
 本当に重要な物がたくさんあるのか、それとも相当用心深いのか。
 灰皿も用意していない人物が?
 開かない以上はどうしようもない。壊してもいいが、価値が生まれるかどうかは壊してみないとわからない。それに壊すには一苦労どころではない苦労をしそうだ。
 克哉は別の物を調べることにした。
 置かれていた寝具はベッドだ。埃が酷くて今すぐ寝る気にはなれない。
 どのくらいこの屋敷にいることになのか。それはまだ克哉にもわからなかった。
 そう考えると休む場所が必要だ。
 静かにベッドの埃を払うことにした。なかなか骨の折れる作業だ。
 だいぶ時間が掛かった。目で見える上に乗っていた埃払うことができたが、寝た瞬間に埃が舞い上がりそうな気がする。両手も酷く汚れてしまった。手を洗いたいところだが、屋根裏には水道までは用意してなかった。
 そもそも、この屋敷自体に水道が通っているとは考えづらい。
 克哉は普段の生活を思い出した。
 三流ルポライターで狭い共同住宅に住んでいるとはいえ、水道くらいはちゃんとある。食べ物だって自給自足ではなく、お金を出して買う物である。
 とは言っても、幼い頃は田舎に住んでおり、水はいつも井戸からくみ上げていた。そのくみ上げを仕事をさせられていたのが克哉だ。
 克哉は煙草を再び吸おうとして、どうにか堪えた。あと二本しかない。
「……まあ、住めば都か」
 こんな屋根裏でも、長く住めば都かもしれない。
 ただ、そんなに長居をしたいとは思わないが。
 克哉はほかの場所に移動することにした。この場所は生活空間だろう。屋根裏のほかの場所には、またなにか別のものがあるかもしれない。
 手に持てる蝋燭台を見つけた。蝋燭も設置してある。雨戸を開けて日が入ってきたが、奥はまだ暗闇だ。蝋燭台を持って行くことにした。
 雨戸はほかの場所にもあった。
 今度は慎重に開ける。また大音を立てて肝を冷やすのはごめんだ。
 徐々に屋根裏の全貌が明らかになってくる。
 本当に広い屋根裏だ。おそらく屋敷とほぼ同じ大きさだろう。
 もしかしてと克哉は思った。
 屋根裏への道は意図的な作られていた。果たしてあの場所だけが出入り口なのだろうか?
 この屋根裏からすべての部屋に行けるような気がしたのだ。
 埃が邪魔で足下がよく見えない。
 さすがにこの広い屋根裏を掃除する気にはなれなかった。
 出入り口がほかにあったとしても、これでは探すのに苦労しそうだ。
 這いつくばって床を調べるなら、掃除したほうが楽そうだ。
 とりあえず足で少しずつ埃を払いながら進んでいく。
 しばらくして、何やら床に書かれた白い模様を見つけた。
 縦に三本の線。文字だとしたら?川?だろうか?
 向きを変えて改めて見た。そうすると?三?のようにも見える。
 さらにほかにも模様が描かれていた。ただの丸だ。これは見る方向を変えても丸は丸だろう。
 目を凝らして丸を眺めていると、まるで夜空で微かに輝く星のような物が見えた。光が漏れている。埃を払って目を近づけた。
 それは間違いなく穴だった。大きさは針穴よりは大きいが、だいたい錐で開けたくらいなものだろう。
 さらに穴に目を目を近づけた。
 見える!
 かなり見づらいが部屋の中を見ることができた。
 しかも部屋には誰かいるではないか!?
 物音一つ立ててはいけない。
 克哉に緊張が走った。