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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・伍】スノー・スマイル

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「走れソリよ~道の上を~♪ ほーれ! 頑張れ~!!」
「るっさいッ!;」
ズズズズ…と音を立てて白く積もった雪の上に三本の線が残る
「いやぁ悪いねぇ京助君! 君のじゃんけんの弱さに乾杯で完敗だよ」
南がケラケラと笑うと京助が足を止めて溜息をついた
ソリの上には10キロの米とその他イロイロなモノが積んである
袋から飛び出している長ネギにはうっすらと雪が積もっていた
「俺か弱いからぁ」
ソリを引っ張る京助の隣を歩きながら南が言う
「ニボシ (自転車)はもう冬眠させちゃったしさぁ…助かったぜ本当」
南の長い睫毛にも雪が積もっていた
「まさか米頼まれるとは思わなくて一言二言で返事したのはいいんだけどさ;」
南が鼻を啜りながら笑う
「力尽きてあそこにいたわけか;」
京助は母ハルミの (半ば強制的な)頼みごとで郵便局に行った帰りポストの傍で休んでいた買い物帰りの南に遭遇しじゃんけんで負けた為に南の家まで配達員をするハメになったらしい
「あ、上がっていけよ。なんか出すから」
米以外の入った長ネギの飛び出した袋を手に南が自宅の引き戸を開けた
「んじゃお言葉に甘えて」
米を肩に担いだ京助が南の開けている戸から南家の中に入る
「お…林檎のにおいか」
玄関に置いてある芳香剤を見て京助が何故かにやついて言った
中戸を開けて南が袋を置いた
「部屋チョ汚ねぇけどいいか? それとも母さんいるけどあっちにするか?」
南が親指で茶の間の方を指差した

【解説しよう。【チョ汚い】とは【小汚い】の進化系で意味としては凄く汚いということである】

「部屋でいいぞ? 俺の部屋とドッコイドッコイだろ」
京助が上着についていた雪を払い靴を脱いだ
「んじゃ先行ってろや。何か持っていくからさ」
そう言うと南は袋を持って茶の間に入っていく
「誰か来たの?」
「京助。コレとか米運ぶの手伝ってくれたんだ」
南と母親の会話が聞えてくる
微妙に螺旋を描いている階段を登ると部屋が3つ
その左側のドアを開けて京助が中に入った

「…冗談抜きでチョ汚ねぇ…;」
ミシンの周りには布やら糸が散乱していてエライことになってる
床は床で型紙やら本が広げられていて足の踏み場が本当になかった
ベッドには網かけなのか毛糸が編み棒についたまま放置されている
「だからチョ汚ねぇったろ?」
戸口に立ったままだった京助に南が言った
「適当に自分の場所確保しろや」
京助を押しのけて南は部屋に入ると足でテーブルの上の本と型紙を床に落としてそこに持ってきたお盆を乗せると机の椅子に腰掛けた
京助も辛うじて居座れると判断したベッドに腰掛けた
「何だか久々にお前ん家来たナァ…」
京助がお盆の上から湯気立つココアの入ったカップを取り口をつける
「まぁいっつもお前ん家にたかってたらな」
南が足で暖房のスイッチを入れた
「しっかしお前器用だよナァ…」
ベッドの上の編みかけの編み物を手にとって京助が感心して言う
「俺これっきゃとりえねぇし…好きだしな」
南が背中を反らせると椅子がギイィと音を立てた
「体力ないわ頭悪ぃわ一般人だわで」
ケラケラと南が笑う
「俺だってそうだぞ?」
京助がココアを飲み干して言った
「お前体育得意じゃん足速いし運動神経いいし」
南が軽くゲップをする
「お前のコレだって生まれ持った才能だろうが一緒じゃん」
床に落とされた本を手にとって京助が言った
「…お前ってさぁ…」
少し黙った後南が苦笑いを浮かべた