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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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祭り囃子

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「エッサ、ホッサ、エッサ、ホッサ、祭りじゃ祭りじゃ!」
山に川に沼に、そして先祖に感謝し、太鼓に合わせて踊り狂う恩知帰祭は天下の奇祭だった。

 男は老いも若きも、精霊を宿す為に泥を体中に塗り、フンドシ一丁で、男性器と女性器を表わした神輿(みこし)をぶつけ合い、放送禁止用語満載の卑猥な歌を歌う。
 
 女は全員、腰巻一丁で胸もはだけ、大根やナスを掲げながら、歌に合わせて合いの手を入れるのだ。
 
 無論、今日の主役は俺と奈津美で、壇上に上がらされ、晒し者状態で踊らされた。
 
 俺達にとっては、まさに地獄の光景だったが、不思議な事に祭りが進むと共に愉快になって行き、最後には二人で大笑いをしてしまった。
 
 
 
 が、しかし・・・。
 
 東京の会社に戻った奈津美は、兄から送られてきた恩知帰末祭の記念写真を見て、真っ赤になり、その場に崩れ落ちてしまった。

「こんな写真が、会社に出回ったら生きていけないわよ」
 奈津美は即刻、写真をシュレッダーにかけた。

「なになに、二人して旅の思い出に花を咲かせてるってわけ?」
「きっとシュレッダーにかけたのは私達に見せられないキスシーンね」
「おうおう、やけますなあ」

 口々に勝手をいいながら事務所に戻ってきたのは、昼食を終えた同僚のOL達だった。

「どれどれ、写真があるなら見せなさい」

 奈津美から、ふんだくった写真をみた同僚達は絶句した。

「なにこれ、綺麗!」

 写真からはすでに祭りのは抜き取った後だったので、それは村の風景写真だったのだ。
 確かにGWのこの時期、山一面に咲き誇る花々も、青い水をたたえた幽玄沼も美しかった。

「来年は、私達も村に連れて行きなさいよ」
 そう言ったのは社内でも一目置かれている、お局(つぼね)様だった。

「いや、それは・・・」と言いかけた奈津美を俺が止めた。

「わかりました。それじゃあ来年のGWに皆さんを招待しましょう」
 おれは高らかに、そう宣言した。
 部署の全員が恩知帰祭りを体験すれば、奈津美も隠す必要はなくなるからだった。

 大歓声が起こる中、奈津美が耳元で「グッジョブ!」とささやいた。


     (おしまい)
作品名:祭り囃子 作家名:おやまのポンポコリン