りんみや 陸風7
それなら結婚しないと言われるのが怖くて、何も言えなかった。辛うじて結婚指輪は貰った。それは今でも指から離したことはない。城戸に求婚した時も嵌めたままだった。その指輪を別の手でぎゅっと握った。何があっても外したくない。これが証だ。思い詰めた表情で指輪を握っている真理子に城戸はうっすらと微笑んだ。
「あのね、マリー・・・その指輪は一生外さなくていいから。私はきみに贈るつもりはないからね。そのままでいい。」
「ありがとう、リッキー。私も外すつもりはないわ。これは絶対なの。」
「ああ、ゆきの奥さんでいればいいよ。思い出は大切にするといいと思う。ゆきのことは口にして話してくれればいいんだ。私も懐かしいし嬉しいから・・・」
にっこりと城戸は微笑んで子供を抱き上げた。亡き夫を偲ぶことを許してくれる。どちらもが亡くしてしまったものだから、互いに偲ぶから・・・そういう関係であることを城戸は暗に報せてくれる。