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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・四】履くモノ・履かれるモノ

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「あッ! てめぇそれ俺の肉!!」
鍋を二つそしてテーブルを二つつなげての本日の夕食は寒い季節にはもってこいのしゃぶしゃぶ
育ち盛りが集まれば決まって起こるのが肉争奪戦
3馬鹿と京助が寄って集って肉を奪い合っている
「座って食べなさいよ座ってッ!」
大騒ぎの男子のテーブルに向かって阿部が言う
「京助~僕もお肉~」
悠助が皿を差し出して言った
「…食べないんだっちゃ?」
湯気のたっている鍋を挟んで反対側から緊那羅が矜羯羅と制多迦に声を掛けた
「お皿貸して?」
緊那羅が手を伸ばして制多迦の皿を取り鍋の中の野菜とさっと湯に通した肉を持って差し出した
「…りがと」
ソレを制多迦が受け取ると今度は矜羯羅の皿にも同様に盛り付ける
「さっき…」
皿を矜羯羅に手渡しながら緊那羅が口を開いた
「迦楼羅と一緒って言ってたっちゃよね? …私は私だっちゃ…迦楼羅じゃなく。昔 迦楼羅に何があったのか知らないけど…【時】がきても私が迦楼羅と同じ行動を取るのかなんてわからないっちゃ…でも」
隣のテーブルはあいも変わらず肉を巡っての仁義なき戦いが続いている
「…でも?」
それと反対にクツクツと静かな鍋の煮立つ音しかしない緊那羅たちのテーブル
途切れた緊那羅の言葉に矜羯羅が声を掛ける

「京助と悠助は私が守るっちゃ。何があっても」
緊那羅が真っ直ぐ制多迦と矜羯羅を見て言った
「…二人とも?」
矜羯羅が聞き返すと緊那羅が強く頷いた
「…てるよ…やっぱり」
いつの間にか空になった皿を置いて制多迦が呟いた
「…るらもそうだった…でもあの人が許さなかった…そしてまた繰り返そうとしてる…」
タレだけが残っている皿を箸でつつきながら制多迦が言う
「【時】がきたら僕らはそれに従うしかできない…それが当たり前で使命なんだと仕方がないと思っていたよ」
矜羯羅の腕の輪がカチャリと鳴った
「京助~お肉~!!」
「この肉は俺んだからな!」
「うっわ!! 三枚同時かよ!!」
「野菜も食べなさいよ! 野菜! 煮えすぎて透明になってるじゃない白菜ッ!!」
隣のテーブルからとめどなく聞えてくる【肉肉肉!】という肉連呼の声
「…でもそれがおかしいと思う様になってる」
矜羯羅の言葉に緊那羅が顔を上げて矜羯羅を見た
「僕も君と同じ考えになってきてるってことだよ緊那羅」
矜羯羅が言うと制多迦も頷いた
「…私と…同じ…?」
緊那羅がきょとんとして聞き返す
「僕もあの二人を守りたい」
そう言って矜羯羅は隣のテーブルで肉を争奪している京助と悠助に目をやった
「…くも…あの二人は守りたい」
制多迦も矜羯羅同様二人に目をやると緊那羅も顔を向ける
「……何だよ;」
かなりの集中した視線を察知したのか京助が隣のテーブルで自分を見つめている三人に言った
その京助の一言で茶の間にお互い見つめあっての沈黙の時間が流れた

「おッ! ってかそっち肉大量にあまってるんじゃんかッ!」
その沈黙をうちけしたのがやはり【肉】の一言
3馬鹿と京助がやれ奪え!! との勢いで肉に箸をかける
「アンタ達まだ食べるわけ?」
その様を見て阿部が呆れて言う
「京助~僕もお肉~!!」
悠助も隣のテーブルに移動して京助の服を引っ張りながら肉をねだる
「ちょ…京助;」
緊那羅を押しのけて鍋に群がる3馬鹿と京助
「タカちゃん食ってるか?」
制多迦の隣に無理矢理居座った中島が肉を鍋で泳がせながら制多迦に言った
「…君らがきたら食べれないじゃない?」
矜羯羅が微笑みながら言う
「こーいうもんは早い者勝ちなんだ!! 弱・肉・強・食!!」
坂田が自分の皿に肉を取りながら力説する
「京助~!」
後ろで悠助が足をバタバタさせる
「…ごちそうさまでした」
今まで一言も話さなかった本間が箸をおいて両手を合わせた