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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第五回・四】履くモノ・履かれるモノ

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洗濯機が洗濯終了の音を響かせた土曜の午前
変な寝癖のついた頭のまま歯ブラシを動かしていた京助を押しのけて母ハルミが洗濯機の蓋を開けた
「おそよう」
母ハルミが洗濯物をカゴに移しながら京助に言った

【解説しよう。「おそよう」とは「おはよう」の反対の意味で遅く起きてきた人に対して使う言葉である】

「ほひゃひょ」
歯を磨きながら返した京助の口の端から液体となった歯磨き粉が垂れた
「ちゃんと拭いて来なさいよ? ソコ」
母ハルミが顎で床を差し洗面所から出て行く
「あら緊ちゃん…最近お寝坊さんしてるわね」
廊下から母ハルミの声がする
「目は覚めてるんだっちゃ; だけど…布団から出られないんだっちゃ;」
続く緊那羅の声
「わかるわぁ…最近寒いものね」
笑って言う母ハルミの声が遠のいて
「あ…おはようだっちゃ京助」
髪を解いたままの緊那羅が洗面所に入ってきた
「おそようだろ」
口を濯いで顔を上げながら京助が言う
「…すごい寝癖だっちゃね;」
緊那羅が四方八方に跳ねている京助の寝癖を見て笑った
「俺髪硬いからな~…まぁすぐ直るんだけどさ」
蛇口をお湯の方にして頭からお湯をかぶり手で撫で付けるといつもの髪形になっている
「私は髪が柔らかいから寝癖がつかない代わりにこんんがらがるっちゃ」
緊那羅が傍にあったゴムで髪をゆるく一本に束ねて歯ブラシを手に持った
「まぁソコまで長けりゃそうだろな」
タオルで顔と髪を拭きながら京助が言う
「あれ~? ハルミママは?」
悠助がひょっこり洗面所を覗いて言った
「母さんなら洗濯物干してると思うぞ?なした?」
使ったタオルを洗濯機の中に入れて京助が悠助に近づいた
「踵が痛いの」
悠助が片方の足で片方の足の踵をさすった
「踵? 見してみ?」
京助が悠助に言うと悠助がその場に座って足を上げ踵を見せた
「あ~…乾燥してカサカサ…ところどころ切れてるし…こりゃ痛いわな」
悠助の踵を撫でて京助が言うと歯ブラシを咥えたままの緊那羅も悠助の踵を見て撫でる
「くすぐったい~;」
眉を下げて悠助が笑うと京助が更に足の裏をくすぐる
「にゃー!! やー!!」
悠助が声を上げて笑い出す

ゴン

「あ」
暴れた悠助の頭が壁にぶつかった
「…スマン;」
京助が悠助を抱き起こして謝る
「とにかく踵何とかしねぇとな~…」
悠助を抱き上げて京助が言う
「…話そらしたっちゃ…」
歯ブラシを口から出して緊那羅が呟いた
「母さん」「ハルミママ~」
京助と悠助が同時に母ハルミを呼んだ
「なぁに?」
茶の間の隣の部屋に洗濯物を干していた母ハルミが後ろは振り向かず声だけで返事をした
「悠が…」「踵が…」
兄弟がまたも同時に言った
「悠ちゃんの踵がどうしたの?」
兄弟それぞれの言葉をたして何が言いたいのかわかるところがさすが母親
「かさかさで切れてんだ」
京助が悠助を下に降ろした
「痛い~…」
床に座った悠助が自分の踵をさする
「あぁ…京助。テレビの横の引き出しに雪の元かケラチナミン軟膏入ってるはずだから塗ってあげて? 悠ちゃんはきちんと靴下履いてね」
肩に京助のシャツを掛け悠助のパーカーをハンガーに掛けながら母ハルミが言った
「雪の元-雪の元~」
変な歌を小さく歌いながら京助が引き出しの中を探し始める
「悠助大丈夫だっちゃ?」
身支度を終えたらしい緊那羅が悠助に声を掛けた
「歩くと痛い…」
悠助が眉を下げると緊那羅が悠助の踵を優しく撫でた
「毎年のことなのよね」
洗濯物を干し終わった母ハルミが悠助の隣に座って踵を見た
「ほいよ雪の元」
京助が母ハルミに雪の元とかかれた軟膏を手渡した