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ストレス

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 ストレスが溜まって溜まって仕方ない!ああ仕方ない!
 死ねぇえと無意味に叫びたくなる。そんな理由はやはり人間関係とか人間関係とか。
 そして、僕がストレスを溜まりに溜めて爆発寸前になった時。
 それは起こった。いや、現れた。
 本当に、突然。
 美女が鼻先で空に浮いていたのである。
「…」
【イヤン見ないで】
「…」
【なんとか言ってよ】
「…どなたでしょう?」
 ボインきゅいんボインとナイスバディのおかっぱな美女は、黒のカクテルドレスを閃かせ空でステップする。次いでにウィンク、僕はなんとなく手を振った。ついでに、自分の脳内回路の異常を疑った。
【あなたのストレスよ。溜まり過ぎたストレスエネルギーの凝縮体がわ・た・し】
 おわかり?麗しく滑らかな素足。そのペディキュアが塗られた指で、僕の顎は上にあげられる。僕の頭は無事?あ、でもなんか天国のような気がしないでも無い。
 自称、僕のストレスであるお姉さんを見て、ストレスの軽減を思った。そういうことだろ?だって、ストレスが凝縮されたのが目の前の美女なわけだし。
 だが、冒頭で叫びたくなった黒い靄は、胸中でまだ蟠っていた。
 …あれ?まだなくなってなくないか。
【あたりまえじゃない】
 美女はほほ笑んだ。
【だって、まだ存在してるでしょう?】
 美女は、自分の胸に手を当てた。


 ストレスはなくならない。
「ね、ぇ。四ヶ野(しがや)くん」
 あの近いんですけど、オバサン。近いんですけど。香水が鼻にかかって痛い。
 僕の横で、ギャルをそのまま育てて劣化したような女が、頼んでも居ないのに、仕事の説明をする。僕の被害妄想だったら良いんだけどな。最初こそ、親切に教えてくれる人だと思っていたけれど。
 思わず、目の前でため息を吐きそうになった。
「魔戸さーん。このキャベツってここ置いといて良いんですか?」
「は?何」
 途端、声の質があからさまに変質する。胸に、むかつきがひと塊。
「…黒塚くんが、キャベツの場所聞いてますよ」
「そうねぇ?そこよりもう少し厨房側に置いといてくれる?」
「はーい」
「はいは、伸ばさない」
「っす」
「ねえやる気あんの?」
「まあまあ、魔戸さん。黒塚くん新人だから」
「やだぁ~四ヶ野くんやさしぃー」
 魔物が居る。胃が痛い。でも、辞める余裕ないんだよな今。そんな気が遠くなった一瞬。黒塚は、タイプじゃ無いんだねオバサン。というか、黒塚くんがマイペースで大雑把な人でよかった。前の新人の女の子は、魔物の攻撃に、耐えきれずに辞めていったのである。
 僕の内心なんて、腹黒とされる内心より軽い方だろう。知り合いの、男が人の良い笑顔のまま、女はヤれれば良いなんて言っていたのを思い出した。あれよりマシだ。
 ああ、ストレスが溜まる。
 吐き出したくても、適当な相手が居ない。高卒でフリーターになってから、進学派ばかりの友人たちとは連絡は疎遠だった。
 爆発寸前だった。おっと既視感。
 しかし、残念。美女は、増殖しない。
 美女は、あれから消えること無く僕の目の前を浮遊している。
 ストレスメーターが上がると美女は、デカくなる。
 最初その、ストレス針が振り切れる感覚が再び襲って来た時、僕は2人目の美女を想像した。だが実際は、巨大化する美女である。
 風船の要領らしいが、ナイスバディのまま彼女が巨大化するので、人類が小人にでもなった気分に日々なっている。既に彼女は、3メートル越えの迫力美人である。
 …パンツ見えるんじゃ無いか?と考えた僕の天罰か。
 翌々日、3・5メートルの彼女のカクテルドレスから伸びる麗しい脚は黒いストッキング仕様になっていた。
 えー。


 ストレスは依然。ストレスである。
 僕は、こみ上げる胃液に白旗を振るや、病院へと直行した。



 えーえーえーえー?
 病院内は、ハーレムでした。

 とりあえずどこに行けば良いのか分からなかったので、総合受付まで行ったんだが。
 辺り一面、美女に付き添われた人ばっか。僕ほど巨大化した美女は居ないけど、クローン体を大量導入したみたいな光景に気持ち悪さがこみ上げる。
 吐き気も付いて来てもう最悪である。



「お姉さん、どうしたらお姉さんは消えるの?」
【ストレス発散したら?】
 最もである。



 半年後、僕は、とうとう、スーパーの店員を辞めた。美女は既に、天を突く巨大さである。
 ストレス発散ストレス発散ストレス発散ストレス発散。呪文のように唱える僕に、美女の巨大な麗しき足指が見える。
 潰されそうだ。
 そうだ。実家に戻ろう。
 僕は、若干ふらつく足取りでマンションのエレベーターに乗り込んだ。

作品名:ストレス 作家名:謹祝