神様うぃずみー①
「まあ、ずっとこの姿ですけど汚れてないし良いんじゃないですかね」
「・・・」
ああそうだ、着物で思い出した。
「神様、お土産・・・お供え物です」
「言い直さなくていいんですよ?」
「いや、神様に差し上げるものですから」
「いやお供え物ってなんかこそばゆいんですよ」
「そんなものなんですか」
「そんなものなのです」
っと脱線していた。
「神様が人に認識されなかった間の歴史です」
僕は鞄をあさって一冊の本を探し出し、神様に差し出す。
「歴史書・・・ですか?」
「まあ、そんなものです」
大体600ページ位あるこの参考書は割と重い。神様の手の上に載せると神様が急に泣き出しそうな顔をした。
「どうしました神様、重いですか?」
「いや・・・」
泣き出しそうな顔の神様。
「このような重さのものを持ったのは何百年ぶりだろうと思いまして・・・これを持ってやっと自分が人間に認識されているんだって自覚しまして・・・」
「神様、これからそんな自覚くらいいくらでも出来ますから」
神様は指で目を擦る。
「そうですね、まずは今までの歴史を知らなければ」
そのまま木にもたれかかってその参考書を読みだす。割と時間がかかりそうだし、僕も鞄から画板を取り出し、神社の祭壇をスケッチし始めた。そして僕のスケッチもそろそろ完成かな、というころ。
「日本も世界も、変わっちゃったんですねえ」
「まあ江戸時代に比べると・・・」
「日本は進歩しましたし、世界もかなり進歩しているらしいですね」
読み終わったらしい。何か感慨深い様子である。しかし話し出すと長くなりそうだし、僕の帰る時間もそろそろ迫ってきているので、一応話を変えておく。
「そういえば神様」
「なんですか?」
「その着物って変えられますか?」
「ああ、一応出来ないことはないですけど」
「その恰好は外だとかなり浮いてしまいます。明日そういった服装の話をしますので」
「しますので?」
「今日もここで待っていてください」
「・・・はい」
僕は鞄をゴソゴソとあさり、何冊かの文庫本を取り出す。
「まあ暇つぶしくらいにはなりますよ」
自分の本棚から適当に見繕って持ってきた文庫本。神様は受け取ると、少し困ったように、
「こんなにしてもらって・・・本当に良いんですか?」
「いえ、別に大したことじゃないですよ」
「じゃあ、有難く借りさせていただきます」
「はい」
それでは、と僕は一礼すると画板を鞄の中にしまい、鳥居をくぐり抜けた。神様のお礼が後ろから聞こえてきた。
さて、今日も家に帰ろうか。