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神様うぃずみー①

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「君は、神様を信じますか?」
青年は、どこか困ったように笑いながら僕に聞いた。
ーーこれは、普通な僕と特別な神様の、どこか不思議な物語。

5月26日(木)
僕の通っている高校から徒歩10分のところに、神社がある。赤い鳥居から続く石畳、そしてその先には拝殿があり、神社を取り囲むように植えてある何十本もの木々・・・と、割と本格的な作り。それに、いつでも綺麗に掃除がしてある。しかし、僕が行くときは、必ず人がいない。普通の神社ならいるはずの神主も見かけない。何故だろう――なんて思いながら、今日も僕は放課後、その神社に向かっていた。
僕の通う高校は住宅地に囲まれている。高校を出て10分、住宅地もだんだん閑散としてきた中、公園の横にその神社はある。公園はいつも子供が遊んでいて、その様子を微笑ましそうに見ている人たちもいる。しかし、そのすぐ横にある神社の鳥居には誰も目を向けない。閑散としていても住宅地、家の中に急に神社が現れるのは奇妙な光景だと思うのだが、誰も神社を見ず、そして神社に入る人はいない。今日もそうだ。僕は軽く後ろを振り返り、僕に
注目している人がいないことを確認すると、神社の中に一歩足を踏み入れた。

やっぱり誰もいない境内を歩きながら、ふと考える。ここにいつ来ても人がいないのは、この鳥居の向こう、つまりこの神社が異世界だからなのかもしれない。まあそんなことはどうでもいい。僕はよっこらせ、と木にもたれかかると、そのまま画板を出して神社のスケッチを始めた、その時だった。
「君は、神様を信じますか?」
人がいないはずの神社で聞こえないはずの声が聞こえた。声の持ち主を、神社を見渡して探してみる。すると、神社の最深部、賽銭箱に腰かけた一人の青年がいた。青年はもう一度僕に問いかける。
「君は、神様を信じますか?」
青年はどこか困ったような笑顔を浮かべながら再び僕に聞いた。江戸時代の武士が着るような着物を着た、人の良さそうな青年。ここの神主さんなのだろうか。
「神様、ですか・・・まあ、信じる、といえば信じますけど・・・」
と、青年はいきなり賽銭箱から立ち上がり、僕に深々と礼をして言った。
「はじめまして、神様です」
一瞬思考が追いつかない。とりあえず状況確認。
「神主の方ですか?」
「いいえ、神様です」
「参拝客の方ですか?」
「いいえ、神様です」
「・・・神主さん、ですよね?」
「いいえ、神様です」
「・・・・・・・・・神様、なんですか」
「はいそうです」
困ったような笑顔はどこかに消え、若干焦った要になっている神様(自称)。・・・さて、宿題が多いし帰るか・・・
「いや、ちょっと帰らないでくださいお願いします」
焦ったような表情がすでに泣きそうな顔に変わっている。そのままダッシュで立ち上がった僕のところまでくると、そのまま制服の袖を掴み、
「いや、とりあえず話だけでも・・・」
その勢いに押された僕は、そのまま座り込んでしまった。
そして約10分後。
「そういうわけなんです」
「・・・滅茶苦茶嘘っぽいです」
「本当なんです」
あはは、と乾いた笑いをする神様(自称)。彼が話したこと。それは、
・自分は神様である
・神様は、自分が神様である、と人に認識されない限り神社から出られない
・神社はいわば神様の具現である
・自分は影が薄い
・人に神様として認識されずかなり長い時が経った
「・・・だから僕が帰ろうとしたときに引き止めたんですか」
「はい・・・申し訳ありませんでした」
「・・・分かりました、あなたは神様です」
認めたくはないし、若干担がれているような気もするが一応ここは認めておく。
「そうですか!認めてくれますか!ありがとうございます!」
超笑顔の神様。そのまま僕の手を両手で握ってぶんぶん振ってくる。
「神様痛いです」
「あ、すいませんでした」
手を離す神様。と、神様は僕に問いかけてきた。
「そういえば、徳川将軍って今何代目ですか?」
トクガワ・・・ああ徳川か・・・あれ?徳川?
「江戸時代はとうの昔に滅びましたが・・・」
神様が目を丸くした。若干手が震えているようにも見える。
「嘘・・・ですよね?」
「本当です、武士の社会はとっくに終わりました」
「あの徳川家が滅ぶなんて・・・何があったんですか?僕が最後に認識されていた時は・・・」
そのままじっと考え込む神様。とりあえず話題を逸らすために聞いてみる。
「神様って人間に認識されてない時は何してたんですか?300年近くも」
「・・・・・・・・・掃除、してました」
だからいつ来ても神社が綺麗だったのか・・・なんて不憫な神様。
「じゃ、僕はそろそろ」
「二度と来ないんですか!?」
「いや、明日また来ますよ」
「ああ、よかった・・・」
それでもまだ心配そうにこっちを見ている神様。
「いや、来ますから。なんなら神様的な力で僕に何かしてもいいですけど」
「いや、でもそれはちょっと」
「ちょっと?」
「まだ能力の使い方をほとんど思い出していないので」
「ので?」
「今使ったら最悪この神社が爆散することも」
「・・・ちゃんと来ますからね」
僕は立ち上がり、地面に置きっぱなしだった画板を鞄にしまうと、ん、と大きく伸びをする。そして神様に言うことを思い出した。
「あ、神様、今日は神社の外にでないでください」
「何故ですか?」
「神様のその江戸時代の常識だとこの世界は生きていけません」
「ああ、そういうことですか、わかりました」
僕は鳥居を抜けようとしてふと後ろを見る。すると神様は、それでは、と言って僕に深く一礼をした。僕も神様に軽く一礼をして神社を出る。夕方の6時、夕焼けが火事のように赤かった。
・・・明日は歴史の参考書でも持っていこう。

5月27日(金)
僕にも人並み程度には友人がいるし、人並み程度にその友人との付き合いもある。とりあえずその友人たちと放課後に絡むことはほとんど無いから神様と会うのも平日は問題ない。だが問題は休日だ。休日は必ず友人の誰かから電話がかかってくる。それをどうするべきか、と考えている間に一日が終わってしまった。とりあえず友人の一人のところに行く。
「おい」
「あ?なんだ」
「今週の日曜は用事があるから」
勿論その友人が僕を今週誘う予定だとは思っていない。彼は、何故かある話題を話すといつのまにか僕の友人全員に広まっている、という謎の能力の持ち主なのだ。おしゃべりとも言う。
「ああ、分かったよ。じゃあな」
「おう、じゃあ」
さて、神社に向かうか。
公園の横の赤い鳥居。いつも通りの違和感。僕は今までと同じように、僕に注目している人間がいないことを確認してから鳥居をくぐった。
「神様」
呼びかけてみる。と、右の方から、
「ああ、こっちです」
呼ぶ声がする。右を見てみると、そこには竹箒を持って神社を掃除している神様の姿があった。・・・何故か妙に似合っている。
「掃除が趣味なんですか?」
「それは、300年もやってますと・・・」
逆にそれ以外趣味にできるものがない、ということなのだろう。神様は、木に竹箒を立てかけると、僕のところに近づいてきた。ちなみに今日も、昨日と同じ着物を着ている。
「その着物って洗濯しなくていいんですか?」
作品名:神様うぃずみー① 作家名:春原蓮