【第五回・参】ヘリカメ様
「あ、飛んだ」
京助の声に一同茶箪笥を見たがソコにヘリカメの姿はなかった
「鳥類がもたもたしてるから…」
京助がヤレヤレと溜息をついた
「かるらんのばか----!!」
悠助が叫んだ
「なッ!?;」
怒鳴り返すにも返せない迦楼羅が詰まる
「見つけるの一苦労なんですよ?何してるんですかまったく…」
乾闥婆が溜息をついて腰に手を当てた
「…ワシが悪者か?;」
迦楼羅がガムテープを持ったまま呟く
「音がしないってことはどっかにとま…ってたよオイ」
京助が悠助の方を見て言うと悠助がすくみあがった
そして恐る恐る自分の周りを見渡して
「や------ッ!!;」
服の腕の部分に蠢くヘリカメを見て叫んだ
「取って取って取って--------ッ!;」
泣きながら腕をブンブン振るとヘリカメがまた飛び立って今度は迦楼羅めがけてタックル体勢に入った
「迦楼羅!」
乾闥婆が叫んだ
「のぁ?!!;」
乾闥婆の大声といきなり突進してきたヘリカメに驚いた迦楼羅の口から小さく炎が出た
ジュッ…
「…火葬…」
京助が呟いた
迦楼羅の足元には茶色から黒に色が変わってしまったヘリカメが落ちている
一同ソレを取り囲み見下ろした
辛うじて原形は留めているもののもはやヘリカメに息はなく
「…ヘリカメは?」
恐る恐る近づいてきた悠助の歩く振動でヘリカメの足がポロリと取れた
「昇天なされました」
京助がヘリカメに向かい合掌した
「…何だ?;」
何がどうでどうなっているのかさっぱりわからない迦楼羅がガムテープを持ったまま京助が合掌してるのを見て一緒に合掌しながら首をかしげる
「ヘリカメ退治した様ですよ迦楼羅が」
乾闥婆も何気に合掌しながら言った
「燃やすと匂いしないのですか?」
合掌したまま乾闥婆が京助に聞く
「何でかしないんだわな燃やすと。だから俺ストーブにくべてるじゃん?」
手に持っていた切れっぱしのガムテープにヘリカメをそっとくっつけながら京助が言った
「京助~ヘリカメの足残ってる~」
悠助がしゃがんで落ちているヘリカメの足を指差すと京助が素手で足を拾ってガムテープにくっつけた
「触っても大丈夫なんだっちゃ?」
その行動を見ていた緊那羅が京助に聞くと足を拾い上げた手を緊那羅の顔の前に出した
「嗅いでみ?」
緊那羅が恐る恐る京助の手に鼻を近づけると京助が緊那羅の鼻を摘んだ
「に”っ;」
緊那羅が鼻を押さえて飛びのくと京助が笑う
「してやったり」
笑いながらガムテープをストーブにくべる
「…そんなに臭いのか? あの虫の匂いは」
少し興味があるのか迦楼羅が乾闥婆に聞く
「嗅ぎたいですか?」
乾闥婆はそういうといまだ匂いの取れない手で迦楼羅の鼻と口をふさいだ
「ふがっ!!?;」
迦楼羅が声を上げる
「どうです?」
手を離して乾闥婆がにっこりと微笑んだ
「~…;」
開放された迦楼羅が床に手をつきハーハー言っている
「な…何なんだ!その匂いはッ!;」
涙目で怒鳴った迦楼羅の前に乾闥婆が匂いつきの手を出した
「ヘリカメの匂いです」
そう言った乾闥婆
「ハライセに見えるのは俺だけだろうか」
京助がボソッと言うと
「…私もそう見えるっちゃ…」
自分だけがヘリカメ臭に侵されているということが結構ムカついているらしい乾闥婆が執拗に迦楼羅に向かって匂いのついた手を嗅がせようといている
「やめんか!; やめろといっているだろう!たわけッ!;」
ついに後ずさりから駆け足に変えて迦楼羅が逃げる
「遠慮しないで下さい。ヘリカメの匂いに興味があったのでしょう?」
それを(黒い)笑顔のまま乾闥婆が大股で追いかける
「一回嗅げばいいわ!;」
迦楼羅が怒鳴る
「追いかけっこ~」
乾闥婆の後を悠助が追いかけ始める
「お子様は元気どすナァ…」
京助がハッハと笑いながらその光景を見ていた
作品名:【第五回・参】ヘリカメ様 作家名:島原あゆむ