天気予報はあたらない
劇は結果としては大成功だった。
鳴りやまない拍手は、きっと泣きながら役を演じたケータへ贈られたものであろう。舞台袖を見ても、もらい泣きしたのか、女子たちが泣いている。一緒に作り上げてきたものとして、これは喜ぶべきものなのだろう。
ただ、それでもおれは負けたのだ。
照明の光の中、顔を赤らめながら泣く、ケータの顔が何度もフラッシュバックする。それと同時に、おれの気持ちもどんどん明白になっていく。
それがたまらなく怖いのだ。
一緒にいられなくなることが怖い。拒絶されるのが怖い。この気持ちが一生続くのかわからないのが、怖い。たくさんの恐怖がおれを支配していった。
なんとかして、幼馴染を続けなくては、おれは生きてはいけないのだ。
「西野先輩、付き合ってください。」
「あぁ、いいよ。」
だから、目の前に転がっている、安易な果実を食ってしまったんだ。たとえ、それが猛毒だとしても、それにすがるしかなかったんだ。こんなおれなんか、白雪姫のように眠り続けてしまえばいいのに。
だって、おれは逃げたのだから。
幼馴染というものに固執し過ぎた故に。
逃げたのだから。
作品名:天気予報はあたらない 作家名:雨来堂