金枝堂古書店 三冊目
あとがきめいたなにか
都市で生まれ育った人間でも田舎やその素朴さにノスタルジーを感じるのは面白い現象ですよね。思うに逆に言って理想化された空想としてしか内在していないわけで、井上ひさしの言うクローバーの香りを賢治の作品にどこまで感じられるかというのはわれわれにはわかり難い特権的なものなのかもしれない。そう思うと何だか勿体ないような気持ちになります。レストランの展示用ろう細工が美味しそうに見えるような心持というか、うーんよくわからん。
ギャリコは何はともあれ『スノーグース』。映画化決定した某文学少女さんが一番最初に美味しくいただいていたのがギャリコでしたね。
いわく「ギャリコの物語は冬の香りがするわ。清らかに降り積もった新雪を、舌の上でそっと溶かし、その冷たさと儚さに心が気高く澄んでいくような、そんな美しさと切なさがあるわ」
作品名:金枝堂古書店 三冊目 作家名:秋涼いちる