ファントム・サイバー
Link7 ワールド
――目覚めるんだ。
私は誰かに呼ばれたような気がして、永い眠りから目を覚ました。
辺りを見回して、ここが病院だということが知れた。
誰かが用意してくれたのか、年号と日付が表示される時計が置いてあった。
そうか……。
私はIT関係の仕事していた。多くの大金も掴み、それなりに幸せだったのだろう。
記憶と時計の年号を照らし合わせると、大よそ七年前にその事故は起きた。
その事故が起きた日は酷い土砂降りだった。私はいつものように会社に出勤しようと、愛車のバイクに乗って走っていたところを、大型トラックに跳ね飛ばされたのだ。
どうやら私は死に損なったらしい。手も足も、全て作りモノのようだ。
「……薔薇の香?」
呟いた男の口元は微笑んでいた。
どちらが幸せだったのだろうな?
私は病院関係者が来る前に、ここから逃げ出すことにした。
どうやら天は私に大いなる力を授けたらしい。
私は内から込み上げる力を感じた。
あの世界での法則を私の身体は受け継いだままなのだと――。
鼻を衝く薔薇の香であたしは目を覚ました。
「あたし……」
付けっぱなしのノートパソコンが腕の前にあった。
「そうか、全部終わったんだ」
ものスゴイ喪失感。
胸が苦しい。
あたしは大切なものを失ってしまった。
リョウはどうなったの?
本当に一緒に滅びてしまったの?
信じられないし、信じたくない、誰かウソだって言って!
だって、悲しすぎる。
ファントム・メアに取り込まれたとき、あたしは逢えたのリョウに……。
楔に繋がれ磔にされたリョウ。暗闇の中で、弱かったケド輝いていた。あれが本物のリョウなの。
だいじょぶ、いつか必ず救うから待ってて……リョウ。
今回は恥ずべき失態だったと言わざるを得ない。
ローズにやられるならまだしも、新米のメタルに不意を衝かれるなんて……。
まだまだボクは活躍し足りないよ。
しかし、真のファントム何度でも蘇る。
嗚呼、意識が遠退いていく。
暗黒の眠りの中で、ボクは待つとするよ……。
次の覚醒めをね……。
それでは、ごきげんよう……。
(完)
作品名:ファントム・サイバー 作家名:秋月あきら(秋月瑛)