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エベレストは昔海だった(コラボ作品)

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 しかしやがて、穏やかだった鬼子たちの間で喧嘩が頻繁に生じるようになっていた。二日酔いで仕事を休むようになり、怠け出す者が出てきた。酒をもっと飲ませろ、と奪っていく者まで現れ、喧嘩が高じてついに殺人にまで至ってしまった。
 彼らは、生まれて初めて味わった酒に呑まれてしまったのである。適量というものが分からなかったのだ。
 酒を飲まない者からは恨まれ始め、酒を飲む者からはもっと造れと強要された。

 今私の前には、酒を廃棄することを要求するグループとそれに抗うグループとに分かれ、一触即発状態となって睨みあっていた。

 吉田がその間を割って現れた。
「酒はいい面もあれば悪い面もある。今まで経験のなかった君たちに急に持ち込んだのは、間違っていたのだろう。正しい酒の飲み方を僕たちが指導していく、というのではどうだろう。酒の管理も僕たちで執り行っていこう」
 大橋が続けた。
「酒は気持ちをたかぶらせる働きがある。一方気持ちを落ち着かせる面もある。元気の源を与えてくれることだってある。うまく付き合えばプラスとなるものなんだ」

 吉田も大橋も今や鬼子の世界に融け込み、リーダーの立場にあった。鬼子たちは、三上も含めた3人に十分な信頼を置くようになっていたのである。
 私はといえば、自分の好きな、興味ある研究に没頭していただけといえよう。それらの成果は、ここの文明に大きく貢献してきたはずだ、という自負を持っていたのだが。
 老いた私はもうとっくに、探検隊の隊長ではなかったのだ。