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夢の中かどこかで

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 ゴゴン!!ガタガタガタ!

なんだか意識が遠く―

「おい!おいおいおい!だいじょう―」



あぁ、なるほどね。ふったおれたから、連れて来たってことか。
「大丈夫か?」
 予想外に優しい言葉をかけられて、あたしはドキドキした。黒い目が、あたしのことを見つめている。
「・・っ!?」

 あれ・・なんだろう、これ。なんか、またあの時みたいに―。


「香澄」
「ん?」
 ちょっとぉぉぉぉ!何普通に話しちゃってんのぉ!?
「お前―夢とか見ることある?」
「は?」

 ゆめ?いきなり何言ってるんだろう?

「実は俺・・この学校に来る前に、不思議な夢を見たんだ」
「え?」
「秘密、にしちゃ駄目か?」
「夢で・・どうしたの?」
 あれ。何だろう。これ・・。本日何回目かの覚えがある事柄に、動揺せずに入られなかった。

 そういえば、あたし・・さっきも朝も夢を見て―。



「それには、俺と―ある女子がいて」



さっきの夢には「俺」って言っている男の子がいて



「その人は―この学校の制服を着ていて」



夢では、制服を着ている男の子で


「それで―その人はこの学校にいる人によく似ていて」


その人は、意志の強そうな黒い瞳と、しっかりしたあごが印象的で―


「もし・・かして」
「ずっと・・見てたんだ。初めて会ったときから。おまけに・・夢で」
「一度・・会って・・た?」
「ああ」
 黒い目が、あたしの上で焦点を結んだ。


「俺・・それでその子を好きになっちゃったみたいなんだ・・」
「え・・?」

「もう一度、会いたくて・・・。だから、かもしれない。何回も・・そのこを夢で見るようになって・・それで・・」

「・・!!」
「俺は、運命、なんて信じないけれど・・」
 言葉がそこで切られ、あたしの手に手が重ねられた。あたしは体を起こした。
「偶然、だとは思ってないぜ?お前と・・会えたこと」
「・・っ!あたし・・も」



あたしも本当は会いたかったのかもしれない。
 

「あたしも・・偶然だとは思ってないっ!!」
 準とあったとき、顔も見ないのにかっこいいと思えた。声を、聞く余裕なんかないはずの言動だったのに、「こんな声」と見抜いた。・・あたしは・・あたしは―



「準が好き・・」



 好きだから、好きになってしまったから顔も、声も覚えていたのかもしれない。忘れようとしても、体が・・心が・・準を覚えていたのかもしれない。だから―懐かしいような気がしたんだ。

 準はあたしのことをそっと抱きしめた。

「なぁ・・香澄。俺・・夢でな、お前がすきって言ってくれたんだ。じつはまだ、その続きを見ていない。だから―」

 あたしよりも・・先だね・・。


「夢じゃないところで会ったり、夢じゃないところで言葉を交わしたり、夢じゃないところで―触れあったりしないか?」

作品名:夢の中かどこかで 作家名:Spica