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ひとりぼっちの魔術師 *蒼の奇跡*

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一.僕が生まれた日、その後で



-ちょっとした昔話だよ。
耳を傾けても、ただの時間つぶしだ。-


僕は小瓶から生まれたらしい。
皺皺で。
白髪で。
手は骨と皮。
黒くつばの長いヨレヨレの帽子をかぶった。
そんな爺さんによって創りだされた。

名前も与えられず。
目がさめた時に僕が初めて聞いた言葉は。
爺さんの真っ黒い言葉だった。

そんなに世界を愛していないのなら。
この世界を壊してしまえばいいのに。
ちっぽけな勇気もなく。
呪って恨むなんて。
ばかばかしい。
これが僕の中で始めて生まれた感情。

爺さんと僕の生活は。
奇妙でも、奇天烈でも。
なんでもない、普通な事。

世界がどうなっているとか。
どんな言葉があるのかとか。
国同士のいがみ合いとか。
信じるものの殺し合いとか。
何処かの空間の恋愛沙汰とか。
時の流れの中にある。
呼吸たちの歴史。

世界を愛しきれない爺さん。
時々目を細めて、話をする。
僕には、その爺さんの気持ちなんて。
微塵も理解が出来なかった。

ある日。
爺さんが強く肩を揺らして。
苦しそうに咳をしていた。
よろよろと、僕に近づき、こう呟く。

-お前に生きる道なんてない。
さぁ、何処へなりとでも逝きなさい。-

最後まで呪いの言葉。
蒼く錆びた檻を壊され。
首についていた鎖も断ち切られ。

その向こうの蒼い空の向こうへ。
僕は、体を向けた。

「あんたが教えてくれた世界とやらを見てこようか。どうせ、ヒマツブシにしかならないだろうけど」

腐りかけた床に転がる爺さんを見送って。
僕は、世界の色の中へ溶け込んだ。