sfera
「 花火・バケツの空 」
沈みかけた太陽の空の下で、火の華を咲かせていた。
真っ黒く底の見えない小さな空の上で。
僕らはカミサマのように、揺れる水面に、輝きを照らし続けていた。
右側を見ると、悪戯な君の瞳が、キラキラと輝いていた。
小さな手で、確りと握って勢いよく飛び出す光のシャワーに心奪われているようだった。
水の焼ける音が聞こえる。
何かが焦げる香りがする。
変わらない日常の中のほんの一コマ。
あ、きえちゃった。
君の残念そうな声が耳に届いた。
細い細い糸のような。
小さな小さな玉は。
橙に染まって白になって。
大きく跳んで、小さく飛んで。
水面へ消えた。
蝋燭も小さくなった。
僕は君の肩に手を置いて、暗くなった空を指差した。
頬を膨らませ不満そうな顔を見せる君。
ゆっくりと立ち上がって、蝋燭の火を消す。
両の手で、重たいバケツを持ち上げ、よろよろと君は歩き出した。
手伝う、と僕が言うと、君は首を振って、又よろよろと歩く。
静かに、見えない君の影を踏みながら、その後姿についていった。
これからも、これまでも。
明日も、昨日も。
今日という日は、永遠となって。
僕らの魂に刻み込まれていく。
大きくても、小さくても。
君の綺麗な浴衣姿と共に、夏の日は続いていく。