小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

sfera

INDEX|8ページ/8ページ|

前のページ
 

「 花火・バケツの空 」




沈みかけた太陽の空の下で、火の華を咲かせていた。
真っ黒く底の見えない小さな空の上で。
僕らはカミサマのように、揺れる水面に、輝きを照らし続けていた。

右側を見ると、悪戯な君の瞳が、キラキラと輝いていた。
小さな手で、確りと握って勢いよく飛び出す光のシャワーに心奪われているようだった。

水の焼ける音が聞こえる。
何かが焦げる香りがする。
変わらない日常の中のほんの一コマ。


あ、きえちゃった。
君の残念そうな声が耳に届いた。

細い細い糸のような。
小さな小さな玉は。
橙に染まって白になって。
大きく跳んで、小さく飛んで。
水面へ消えた。

蝋燭も小さくなった。
僕は君の肩に手を置いて、暗くなった空を指差した。
頬を膨らませ不満そうな顔を見せる君。
ゆっくりと立ち上がって、蝋燭の火を消す。
両の手で、重たいバケツを持ち上げ、よろよろと君は歩き出した。
手伝う、と僕が言うと、君は首を振って、又よろよろと歩く。
静かに、見えない君の影を踏みながら、その後姿についていった。

これからも、これまでも。
明日も、昨日も。
今日という日は、永遠となって。
僕らの魂に刻み込まれていく。
大きくても、小さくても。
君の綺麗な浴衣姿と共に、夏の日は続いていく。
作品名:sfera 作家名:くぼくろ