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CROSS 第13話 『帰投』

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 切れたのは、上社の首では無かった……。

 切れたのは、骸骨侍の右腕だった……。切れた右腕は、そのまま
床に落ちた。骸骨侍は何が起こったのかがわからないといった様子
で、右腕の付け根を見てから、後ろに振り返った。上社たちは、骸
骨侍の背後に立っていた人物を見て、ほっとしていた。

 振り返った骸骨侍が見た人物とは、妖夢だった。御自慢の刀を構
えている。そして、骸骨侍が次の行動に移すよりも前に、妖夢の刀
が、骸骨侍の首をちょん切った。切れた頭部は、機内の壁に当たり、
床をコロコロと転がった。赤く耀いていた両目の光は、すぐにプツ
ンと切れた。残った首無しの体は、崩れるように床に倒れた。
「大丈夫ですか?」
妖夢は刀を鞘に収めながら、上社たちに言った。そのとき、山口た
ちがハッチの前に集合し始めていた。
「ぼくは大丈夫だけど、この犬走椛さんがケガをしていて」
「こんな傷、舐めておけばすぐに治りますって!」
心配そうに言い始めた上社を犬走椛が制した。そして、犬走椛は上
社に、近くに落ちていた彼の帽子を手渡した。
「オイ、悪いけどもう時間が無いんだ! 急いで1号機に移動して
 くれ!」
妖夢の後ろで山口が腕時計を指さしながら言った。
「了解しました! それじゃ、動けない者と遺体を、急いで1号機
 に移動しろ!」
「少佐、そんな時間はありませんよ!」
山口の後ろでヘーゲルが、腕時計を指さしながら言う。機内にいた
何人かが、ヘーゲルを睨んだ……。
「急がせるからいいだろ?」
山口はヘーゲルに諭すように言った。ヘーゲルは折れた様子で、渋々
了解した。

 山口と妖夢と数人の隊員が、負傷兵の搬送や遺体の輸送をする隊
員たちを悪魔から守っていた。上空のエイだけでなく、骸骨戦士や
骸骨侍も襲ってきた。
「少佐さん、あっちの奴らを!」
妖夢が骸骨戦士を腰から真っ二つにしてから、空と陸から接近して
くる敵を指さして言った。
「わかったよ!」
 山口は、自動小銃で的確に一匹ずつ撃破していた。骸骨の悪魔は
その場で崩れ、エイは落下して地面に叩きつけられていた。ときど
き、自分に向かって来るエイのトゲを、山口は軽々と避けていた。
次々と、悪魔の死骸が出来上がっていたが、次々に悪魔は襲ってき
た。このころには、エイや骸骨の悪魔だけでなく、他のエリアから
出張してきたらしい悪魔も混じってきた。
 犬走椛は、自分の身を守りながら、その光景を写真に収めていた。
心配に思ったのか、上社は犬走椛を護衛してやっていた。

 10分ほどして、搬送と輸送の作業は完了した。辺り一面は、悪
魔の死骸が散乱しており、足の踏み場が無いほどだった……。それ
でも悪魔たちは、山口たちが乗りこんだエアリアルに向かって突撃
してくる。
 1号機のエアリアルの機内は芋洗い状態で、エアリアルのコンピ
ューターが、定員オーバーだとしつこく告げていたが、緊急事態だ
と山口がコンピューターに言って、やっと黙った。ハッチが完全に
閉まり切るまで、山口は突撃してくる悪魔たちを撃破していた。

 ハッチが閉まると同時に、エアリアルは離陸した。エアリアルは
レーザー弾でエイを蹴散らして、霧の上に出るルートを確保してい
た。霧の上に出れば安全だ。
 地面のエアリアルが着陸していた場所には、悪魔たちが集結して
おり、悔しそうにエアリアルを見上げていた……。
 そのとき、2号機の片方のエンジンが爆発し、もう片方のエンジ
ンも爆発した。爆発による炎が、2号機全体を包みこんだ。いくつ
かの破片が、悪魔にぶつかった。