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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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ゴールドとカッパーの心理合戦(ココロしあい)

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「なら、美和子が課したペナルティは有効だ。『僕が暁にペナルティを課す』。『暁はそれに従う』。現実的に無理なことじゃないだろ?何の問題も無いよ。どっちにしろ、暁は僕にも負けてるんだから、僕の言うことも聞かなきゃならないんだし、これなら君に課せられるペナルティは実質一つになる。実は、暁にとっては得なんだよ――」
 ――おいおい、そりゃ凄い詭弁だな。かなり、無茶苦茶だぞ。協議するレベルだろ、それは。
 聞いていた俺はそう思ったが、レコーダーの中の俺は違った。
「あー、まぁ言われてみればそうだな。痛い目に遭うのが一回になると思えば、確かに得だな」
 ――なに、丸め込まれてんだよ、俺――ッ!!馬鹿じゃねぇのか!
「――とまぁ、そう言うことだよね、美和子?」
「う…うーん。ま、まぁ。そ…そうかなぁー?あはははは…」
 ――困り顔で言っているのが在り在りと想像できる。実はそうだったのか?俺のことを気遣
って…。むぅぅ…。
「そりゃ、どうも。んー、色々と納得出来ない所もあるが…。仕方ねぇ、オーケーだ」
「よーし、承諾したね暁。んじゃぁ、と言うわけで慈悲深い美和子サマのお沙汰を、粛々と受けるがいいさー、このチャラ男め。あははー、覚悟してよね?たった一回で済むと思って、安心している君の心をへし折る位、面白可笑しいペナルティを申しつけてあげるよー」
 ――やっぱり鬼畜な天然優男だった。

    /再生停止/

 その後。俺は八歳から下された『五時限目が終わったら速攻で女子更衣室のロッカーの中に隠れて、皆に見つからないようギリギリの所で室内から脱出せよ』というペナルティと言う名の罰ゲームをやるハメになり、あんな目に遭ったというわけだ。(八歳は、監視と見届けの意味も込めて、俺がロッカーに入る直前まで随伴してきた。…ロッカーに鍵掛けたのってアイツだろ…絶対。くそ、明日会ったらタダじゃおかねぇ…!)
 ただし、ここまでの情報材料では、『何を』切っ掛けに『意識ある無意識状態』になるかは判別がつかなかった。

 美和子の『能力』。性質、その二。
・その一の続き。『意識ある無意識状態』(自覚無く、勝手に行動しているこの状態を指して以後これを、『自動状態(パッシブアクティブ)』と呼ぶ)の継続時間には”ムラ”がある。

(それは今日、俺がロッカーで意識を取り戻した事で明らかになった。初めて意識を失った時は、――翌朝気が付くまで。十八時間ほど『自動状態』に陥っていたが、今日は約二時間ほどで効力が切れた。何回かサンプルを取らなければ分からないが、『自動状態』の持続時間は条件とかによって変わるのかも知れない)
 ――待てよ。
(だとしたら、美和子の『能力』に掛かって『自動状態』を体験をした連中が他にいるかも知れない。例えば、今日――美和子の声を聞いた後、更衣室で画一的な行動を取ったクラスの女子達とか…。話を聞いてみる価値はあるな)
 
美和子の『能力』。性質、その三。
・『自動状態』になった人間は、その前後の記憶を失う。

(『自動状態』が解けた後になって、俺はようやく、その時考えていたことを思い出した。俺が初めて美和子と話した、学食で食事をしたあの日。俺は、彼女が”黒”であるかどうか調べる為、会話に興じて――そしていつの間にか『自動状態』になっていた。『自動状態』になる直前まで俺は、確かに目的を持って会話に臨んでいたはずだ。所が、『自動状態』が解除されて意識を取り戻すまで、目的…――いや『考えていた事』自体――をすっぱり忘れてしまっていた。恐らく、『自動状態』になると、普通の人間なら『どうでもいい』位にしか感じない、軽度の記憶障害を起こすのだろう。実際、俺も深く考えて思い出すまで、重要な目的を『どうでもいい』と感じてたんだからな。きっと『自動状態』になった直後、『まぁーいいかぁ。アハハハ――』とか思ってたんだろうぜ…)
 俺はそこで、思考を一旦中断し、モニターに映るボイスレコーダーのウィザードを閉じた。
 次にマウスを操作して、ボイスレコーダーの記録をハードディスクに転送する。そして、インタネーットブラウザを開き、俺はとあるサイトを開いた。キーボードを操作し、文字をタイピングしていく。
 もちろん、美和子を『攻略』する為の下準備だ。
 内容は、まぁ――あとのお楽しみだ。

 ――さて、賢明な皆様はお気付きだろうか?
 美和子は今日。俺の前で、決定的な『証拠』を見せた。
 ”黒”だと言う証拠ではないが、自分の『能力』に関する『証拠』だ。彼女は、よりにもよって俺の前で『能力』を披露して見せたのだ。
 そう、あの時――女子更衣室で、クラスの女子連中になにかしらの言葉を投げかけたあの時。
美和子が声を掛けるまで女子達は皆、自分のペースで着替えていた。お喋りしたり、悪ふざけしたりして…。所が、美和子が声を掛けた途端、皆それまでやっていた事をぱったりと止めた。
まるで、”自分が今まで何をしていたのか忘れてしまった”かのように…)
 それが決定的な『証拠』だ。『自動状態』になった人間は、その前後の記憶を失うと言う、性質その三の条件にピッタリと当てはまる。
(美和子はそんな素振りを殆ど見せていないが、彼女は俺の事を”黒”だと踏んでいる。自分の事を嗅ぎ回っている『小バエ』だと…!『能力』を俺の前で披露して見せた理由は単純。
『脅し』だ……!
『自分はこう言う能力を持っている、今後コソコソと嗅ぎ回るマネをするのなら、タダでは置かない』というメッセージを込めた――『脅し』。『脅迫』…!アイツは俺が相当”キレる”人間だと言う事を見抜いている。俺なら、そうしたメッセージを汲んでくれるだろうと見越した上で『脅し』という手段に出てきたんだ。
…ははは。お前は本当に優しい奴なんだな。なんせ、直接俺に言えば済むのに、こうやって遠回しに丁重に警告を発してくれるんだからな。そりゃそうだ、自分から抗議しに行けば自分が”黒”だと言う事を証明するもんだ。抗議なんて出来るわけが無い。それをしないのは俺に対する”配慮”ってわけか。そうやって人を傷つけないのがお前の『ルール』ってわけか…)
 ふ…。へへへ…。面白いじゃねぇか。
 お前がそう来るんだったら、俺にも考えがある。もうこれ以上、詰まらない『縛り』は無しだ。思う存分やらせてもらう。お前がお前の『ルール』に従って動いている様に、俺も俺の『ルール』に従って動くまでだ。いいだろう、お前をそ(`)の(`)気(`)にさせてやる…!
(さて、明日からは対策その三だ。悪いが、このまま引き下がる俺じゃねぇぞ。『自分に対する信頼と約束を破らない』のが俺の『ルール』だ。”初志貫徹”、貫かせてもらうぜ)