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盆休み

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 団地という場処は人を迷わせる為に設計されてるんじゃないかと思うことがある。今日のような真夏日には尚更。
 一寸した散歩のつもりが陽光を照り返して無駄に白く光る箱型に囲まれた中を彷徨ってかれこれ30分。歩いたところで景色は変わらず。此処に生活する人々には特殊なアンテナか何かが埋め込まれていて、自分の家までのナヴィゲーションでもあるのではないかとさえ思えて来る。生来の方向音痴を差し引いても、こんな空間で毎日無事に帰宅できる脳の構造というのは理解の外。蜜蜂みたいに帰巣本能がプログラムされているに違い無い。巨大な巣箱の群れ。それとも擦れ違う人々の幾人かは僕のような迷い人なのだろうか。
 熱気に当てられながら当て処無くうろつくのにも流石に嫌気が差してきて、仕方なく来た道を戻ろうと振り返った時、
「あれ?」
 聴き覚えのある声。手を振る、白い長袖。「……ソノエさん?」
「やっぱり。シマくん、髪型変わったから違うかなーと思ったんだけど」
「久し振りー、ソノエさんは変わんないね。そういえば家この辺だったっけ?」
「うん、お盆だしね、ちょうど帰って来たとこ」
「そっかあ、いや僕ちょうど道に迷っててさ、こっち行けば出られる?」
「相変わらず散歩して迷ってんの?あっちに一寸行くと商店街あるよ。喫茶店とかあるし」
「あ、じゃあ暇ならお茶でも付き合ってくれる?久し振りだし。流石に暑いしさ、涼みたいかな」
作品名:盆休み 作家名:シダタクマ