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鴉1 「石原法律事務所」

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小説家でもホストでも芸能人でもない
彼らの真の姿は魔女の使い。



『石原法律事務所』


突然掲げられた看板に銃弾が打ち込まれる。
繁華街から外れた場所にあるビルの前に4人は立っていた。
蠍が景気付けにと銃弾を看板に撃つ込んだお陰で、
ビルの中から6人程男が出てくる。
とても法律事務所に勤める様には見えない男達が
拳銃を構えて、4人にその銃口を向けた。


「お前ら、何者だ!」

先頭に立ったサングラスをした男が蠍たちを怒鳴りつける。
その問いに対して4人は答えようとはしなかった。
蜂はニコっと笑顔だけを見せてる。


「気味が悪いぞ、こいつら・・・」


4人と向き合ったまま、動けずにいる男達は
額から汗が出始めていた。
確認できる限りでは、銃を持った男が二人、刀を持った男一人、
手ぶらな少年が一人。
銃を持っている二人の内の一人、青い髪の青年は
腰のショルダーの中で構える気配も無い。
明らかにこちら側のほうが有利な状況に見えるのに、
言い表せない緊張感が漂う。


「答えろ!何者だ!」


その声を合図に蠍がトリガーを引く。
叫んだ男の顔の中心、鼻筋辺りから血しぶきが派手に舞う。
その血しぶきの先に仲間を撃たれた男達は銃弾を打ち込むが、
気がつくと目の前に笑った男の姿があった。
血しぶきに紛れてたった数秒の間にココまで移動したと言うのか?
時間にして恐らく5秒と無い間に男は脳をフル回転させるものの、
答えが見つかる前に、思考は停止された。
声を上げる間もなくその首は胴体と離れ
地面に落ちる。少し遅れて首の後を追うように胴体も
地に倒れこむと、現実離れした光景に
目を見開いたままの他の男達が喚きだす。
悲鳴を上げながら蜂に背を向け逃げ出そうとするが、
その背中に容赦なく銃弾が打ち込まれ、思考、心臓も
停止するのだった。


「蠍、俺を盾にしながら撃つのだけは
 止めてって言ってるでしょ?」
「たまたま、お前が前にいただけだ。」


蠍と蜂が会話をしながら建物の中に入る。
すると既に室内も死体だらけだった。
階段を上がって行くと、何時の間にか侵入していたらしい
ローズの姿がある。その手や身体は血で染まり、
手にしたナイフの先から真っ赤な雫をポタポタと落としていた。
その背中はいつもの我がままな少年とは違う、
殺しを楽しんでいる様な不気味な雰囲気を漂わせている。
その姿に一瞬歩みを止めた蠍と蜂だが、
ローズの元に蠍は近づく。


「ローズ。」


蠍が名を呼ぶと、ゆっくりとこちらに顔を向ける。
名を呼んだ男の姿を確認するといつものように
少年は笑い、蠍へと近づいてくる。


「お腹空いたから、早く終わらせてラーメン食べ行こう!!」


その言葉に首を縦に振って返事をするとローズは納得したようで、
先に進み始めた蠍に蜂とローズは続く。
小さな建物だからか、あっという間に今回の目星がいる
部屋の前までたどりつくことができた。
何の躊躇もなく勢い良く明けると、窓際に40半ばくらいの男が
立っていた。
男は窓から逃げようとしていたらしく、片方の足は外に出ていた。
蠍達の姿を確認すると男は体制を直し、
部屋の中へ戻って乱れたスーツを直す。


「ななななな、なんだね君達は!?」


煙草や酒で焼けた声が見っとも無くどもる。
部屋の中に足を踏み入れると蠍は男に銃を向ける。
その後ろにローズは立ち、蜂は部屋の書物をあさり始めた。


「石原弁護士だな。」


蠍が男に問うと石原と呼ばれた男は身体を強張らせながら、
少し後ずさる。
蠍の銃を睨みながらたまに、蜂の行動を目で追っている様だ。


「そうだが、君達は誰なんだ?」


震える声を無理矢理抑えながら再度、
蠍に質問をする。
やはり蠍はそれに答えることは無く、
それどころか、さらに男を問いただす。


「表向きは弁護士を装い、実態は暴力団の支部長。
 この法律相談事務所に大量の麻薬を保管し、密売しているな?」


石原はゴクリとノドを鳴らしながら唾を飲み込む。
未だにその視線は蠍と蜂を行き来している。


「な、何の言いがかりだね?君達、警察を呼ぶぞ。」


蠍は石原の精一杯の脅しに怯む様子も無く、
原稿でも読んでいるように止まることなく言葉を続ける。


「相談者と称して麻薬中毒者がここに買い求めに来る。警察の目を欺くため・・・」
「やめろ!いい加減にしたまえ!訴えるぞ!」

蠍の後ろの本棚を調べていた蜂が丁度ドアから一番離れた場所の
本棚へと手をかけた。すると石原は蠍の言葉を大声で遮る。
蜂は一瞬だけ石原に顔を向けるが、ニコっと笑い
本棚に置かれた本や資料を全部床にぶちまける。
音を立てて落ちていく本があった場所の奥には白い人の顔を
模様した置物が幾つも並べてある。蜂はその一つを手に持ち、
阻止しようと叫ぶ石原を無視し、床に叩き付けた。
床に落ちた瞬間に砕け散る置物の中からは白い粉の入った袋が
出てきた。さらに、並べられている置物を次々に壊していく。



「さーってコレは何でしょう?」


蜂は砕けた置物中から出てきた袋を一つ手に取り、
ヒラヒラと石原に見せ付ける。中身はもちろん麻薬だ。
決定的な証拠を見つかった石原は最後の足掻きと
先ほど逃げようとしていた、窓から飛び出す。
その窓に蠍の銃弾が打ち込まれるが、一歩遅く
男は当たることなく飛び降りた。


「・・・チッ!」


蠍と蜂が男に続いて窓から飛び降りようとした瞬間だった。
下から銃声が響き、窓の外では頭から血を流した石原が倒れて行く。
その傍らで気だるそうにした蜜がビルの上へ顔をあげ、
眉を潜めて銃口を蠍と蜂へ向けてくる。


「何やっとんねん、このド阿呆!ちゃんと仕事せぇや馬鹿共!!」


罵声と共に打ち付けられる弾に身を伏せ、
蠍と蜂は頭を抱える。
無敵ともいえる程の強さを持った二人がましてや
その大きな図体を小さくまとめて自分の身を守る姿にローズは
大声を上げながら笑っている。


「一番仕事してないのみっちゃんだよね・・・」
「・・・言うな殺されるぞ。」


何とか蜜の怒りが収まった頃、4人はビルを後にし
帰路へつく。収まったと行っても罵声は止まること無く、
言い返すこともできないまま、貶され続ける一方の蠍と蜂。
ローズは蜜の見方につき、何時の間にか蠍達を蜜と
一緒にいじめ始める。
その罵声地獄から逃れるように蠍は胸ポケットから携帯を出し、
着信履歴の一番上にある名前を選択し、
電話をかける。


『・・・はい、赤坂で御座います。』


スピーカーからは物腰の柔らかな中年の男の声する。


「任務完了しました。」


名も名乗らずに短く蠍が言うと、相手もそれで伝わったようで
2、3蠍と会話すると通話はすぐに終えた。

蠍達の真の仕事とは、裏の世界の魔女と呼ばれる人物の使いである。
魔女の命により、裏の世界の者たちを排除する仕事。
そのターゲットは今回のような麻薬密売人、あるときは闇金、
あるときは暴力団を相手にする事もある。

魔女の僕、その噂は一人歩きし、何時しか闇を裁く闇・・・
彼らを人は"鴉"と呼ぶようになる。



「さーってラーメン食べに行こうよ!!」
作品名:鴉1 「石原法律事務所」 作家名:楽吉