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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第一回】 始まりはエビフライ

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三時間目が始まった頃だろうか…正月中学2年3組の教室内にはちらほらと『ハラヘッタゾ』という腹の鳴き声が聞こえ始めていた
弁当時間まであと一時間
それまで我慢する者、早々に弁当や食い物を取り出しコソコソ(または堂々と)食す者が男子生徒を中心にに見え始めた
そんな中彼【栄野京助(えいの きょうすけ)】も泣き喚く腹と格闘の真っ最中だった
いつもならとっくに早弁をしている時間だった
「…ちっくしょ~…腹減って勉強に集中できねぇ…」
「普段でも集中して無いだろうが」
机に突っ伏してうだうだ空腹だと文句を垂れる京助の隣で幼稚園からの腐れ縁【坂田深弦(さかた みつる)】が眼鏡を拭きながら淡々と突っ込みを入れてきた
「折角ハルミさんがお前の様な馬鹿息子の為に丹精込めて作ってくれた弁当を忘れるからだ。ざまあみろ」
『んべ』と舌を出し京助を小馬鹿にすると眼鏡をかけなおした
「しかたねぇだろが…寝坊しちまったんだから…はぁ~あぁ…」

遡る事二時間前

「こまったわねぇ…」
【栄之神社】古びた石段の柱にはそう記されている
「京助…お弁当忘れて行っちゃって…私は神社を離れるわけにはいかないし…」
京助の母【栄野ハルミ】はかれこれ数十分ほど青い弁当の包みを溜息混じりに見つめていた
そこへパタパタと足音が近づいてきてハルミの後ろで止まった
「僕が届ける~」
どんぐり眼をキラキラさせながらハルミを見上げていたのは京助の弟【悠助(ゆうすけ)】だった
「あら悠ちゃん…そっか今日は小学校開校記念日とかで休みだったのよね…たしか」
そうぽつりと呟き改めて悠助を見下ろす
今年小学校に入学したばかりの悠助は最近積極的に人の手伝いをしたがっていた
「大丈夫だよ~僕もう一年生だもん! それにコマとイヌもついてきてくれるっていってるもん! だから~!!」
そう主張する悠助の横には白い二匹の犬(?)ともとって見えなくも無い犬がふさふさしたなんともさわり心地のよさそうな尻尾を左右に振っていた
「…じゃぁ…お願いしようかしら」
ふふっと微笑んで青い弁当包みを悠助に手渡した
「まっかせてよハルミママ! コマ、イヌ行こう!!」
嬉しそうに玄関に向かって走り出した悠助の後ろをコマとイヌが追いかける
「いってらっしゃい」
多分聞こえていないと思いながらハルミは手を振って見送った
「…あんなに振り回して…中身きっとぐちゃぐちゃね」