ある晴れた日に
「先生、お疲れならば仰ってください。
僕で処理できるものは全部僕に回していただいて大丈夫ですから」
日頃、彼が口にすること。
「自分で何もかも行わず、他のものにも回して作業を分担させて欲しい」
分かっている。
自分ひとりで、この二本の足と手で出来る事の範囲やスピード、そして処理能力。
限界がある事も知っている。
だけれど、僕は本当はできるならば「独り」でやりたいのだ。
そうすれば、だれにも迷惑が掛からず、誰かに僕の存在を必要以上に植え付ける事もない。
僕は、それがいいのだ。
…と望んでも彼はそれを許さないだろう。
分かっているから僕は何時もの言葉を口にする。
「そうですね。君と言う優秀な助手が居るんですものね。君に働いてもらわない手はないですよね」
空の光が刺す様に痛い。
硝子を通してなのに、熱の篭り具合の強さは上り、覚める事はない。
熱い空気を外に吐き出しながら、僕らは「人口的な涼しさ」を手に入れる。
僕の国ではとても「高価」であり、皆必死に「我慢している」か「別の手立て」で何とかやり過ごしていた。
(そうですね、明日はこの事を喋ればいいでしょうか)
浮かんだ事柄が、我ながらピンポイントで彼の喜びそうな内容であることに不思議と笑みがこぼれてしまう。
彼は僕の顔を見ながら不思議そうにしていた。
そして、何時も通りの「早く片付けてください、帰りますよ!」の号令がかかり、僕は机を片付ける準備をする。
明日と言う時間。
例え何があっても、最後には君の笑顔の欠片をほんの一握りでも手に入れられたら。
僕は最高に幸せだと思う。