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鴉 序章

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虚しい音がするだけになり、さらにパニックを起こし始めた
女へと金髪の少年が近寄る。


「お姉さん、ピストルってね、こうやって使うんだよ。」

「へ・・・?」


真っ赤なルージュを塗りつけたように女の
顔が朱に染まる。ドサリと後ろに倒れこんだ
女の死に顔を見ながら少年は無邪気に笑って、
後ろを振り返る。


「さぁ、お仕事終わったし帰ろう!デザートも一杯もらったしね。」


青年達は少年のその言葉に頷き、四人はビルを後にする。
颯爽としたビジネス街を抜けて静まりかえった町に
男達の姿は消えて行く。


*


「今回も良い働きでしたね。」


黒い壁に、黒い家具。闇に覆われた部屋の
真ん中に装飾が細部までこだわったエレガントな椅子に
声の主は座っていた。その真正面に置かれた真っ赤な
ソファに四人の男が腰を下ろしている。
声の主は口元以外はベールで隠されており、
確認することはできない。


「皆、怪我はしていませんか?」


声の主が少し首をかしげながら、男達を心配する。
黒に包まれている所為か、近寄り難いオーラを出しているが
声は花が風に揺れるように静かで優しさがある。


「マスター、召使の怪我の心配などしていたら
 限がないですよ?」

「ブンの言う通りや、自分らはアンタの駒や、一々気にせんでええねん。」


紫の髪をした男の言葉に続いて、
綺麗という言葉はこの男の為にあるのかと思わせるくらい
の容姿からは想像つかないコテコテの関西弁で目の前の
主と呼ばれた女性に言葉を返す。
静かに二人の言葉を聴いていた主が、クスクスと
華麗に笑う。


「蜜、貴方達は駒ではないのですよ?」


「マスターの子供でしょ?」


金髪の少年がガムを噛みながら突然口を開く。
それに主は頷き、さらに言葉を続けた。


「そう、貴方達は私の子供です。」


椅子の肘宛に置いていた腕をあげ、右端に座った薄っぺらい
笑顔を浮かべた男を指差す。


「蜂・・・」


次はその左隣に座った青髪の青年に人差し指を向ける。


「蜜・・・」


ゆっくりと腕を動かしクッションを抱えた少年の視線とぶつかる
所で女の指が止まる。


「棘・・・」


そして、ずっと黙っていた左端に座った
黒髪の男に指を向ける。


「蠍・・・」


腕を再び肘宛に戻し、女は一呼吸置いて
口を開いた。


「世界に捨てられた子。貴方達はこの、闇の魔女の子供です。
 私と共に生き、私と共に死に行く定め。でも、その身に
 傷が付く事を私は許しません。」


男達が女の言葉を聞いた後、一斉に腰を上げる。
沈んでいたソファのクッションが少しづつもどの形に
戻って行く。


「あははっ大丈夫ですよ、マスター。」

「そうそう!僕達、超強いし!」

「自分らの世話良いからアンタの方こそ自分の心配せぇや。」

「失礼します。主。」


間を開けることなく、言葉を並べると、
男達は闇のような部屋を去る。
残された女の後ろに白い毛の混じった紳士服の男が立つ。


「若いというのは良いですな、主?」


男の言葉に女は静かに笑って返した。




鴉―カラス


一体何を目的として存在しているのか、
どんな組織なのか、一切を謎に包まれているが、
彼等の目が光る時その場所に生きているものはいない・・・
そんな、噂だけが一人歩きしている。





―鴉が啼いたら帰ろう

 ―ドコに帰るの?

―お家にかーえろ

 ―お家はドコ?


深い、深い、闇の中だよ・・・・


作品名:鴉 序章 作家名:楽吉