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人工的ロマンス

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吊り橋効果というものがある。
吊り橋の真ん中で一組の男女に会話させると、揺れる橋の上にいるという緊張感を共有することで恋愛感情を抱く、あるいは緊張感を恋愛感情と錯覚するというものである。
あるいはストックホルム症候群。
犯罪の現場において、たとえば銀行強盗などの人質と犯人が長時間非日常的な事態に直面することで、感情の共有により、人質が犯人に信頼や愛情を抱くようになることだ。
実際に犯人と結婚に至ったケースもある。
つまり、恋愛感情というものは作れるのだ。
それが偽物であれ本物であれ、脳が錯覚すれば立派な恋愛になる。
柴田俊之にとっての愛とは、惜しみなく与え、また、躊躇うことなく奪うことである。
どこまでが計算だったのかは本人以外誰も知る由もないが、彼が欲しいものを手に入れる為には手段を選ばない種類の人間であることだけは確かであった。

ある日差しの強い猛暑日、一人の青年が欲しかったものを手に入れた。
作品名:人工的ロマンス 作家名:真野司