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こうして戦争は始まった

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教えて欲しいんだ



「ウ〜 アツイ」

 ミンミンジワジワツクツクホーシ

 中学二年の夏休み、宿題なんかさっさと諦めた私は、夏を満喫することに決めていた。
 クマゼミだか、カワセミだか、ツクツクホーシだか、とにかくなんだか知んないけど、うっさい。
 汗で首に張り付いた髪がウザイったらない。でも伸ばすんだ。そして卒業したらソッコー染めてやる。真っ黒の髪なんてダサい事この上なくて恥ずかしい。
 私の家がある“どど田舎”から、私が通う中学校がある“ど田舎”へと向けて、電車はゆっくりと進んでいた。田舎なのはいいんだ。電車の窓から見えるのは山と畑しかない風景だけど、季節によってその表情を変えるから、一年中変わり栄えのないビルを眺めているよりはずいぶんマシだと思う。ただ一つだけマジむかつくのは、この路線の車両には冷房が付いてないってこと。その代わりに、天井では扇風機がブンブン回ってる。
 電車に乗っているのは私を含めて三人。扇風機の数とぴったり一緒。ここは空気を読んで、一つ私の方に向けた状態で固定して欲しい。切に願う。

 ゆっくりと進む電車の速度は、平行して伸びる農道を走る軽トラックと大差がない。運転席の麦藁帽が風に揺れているのを見ると、扇風機の風より涼しそうだと思う。電車の窓も開いているんだけど、風なんかちっとも入ってきやしない。
 入ってくるのは、クマゼミだか、カワセミだか、ツクツクホーシだか、とにかくなんだか知んないけど、夏を更に夏にするっていう特技を備えた生き物の鳴き声だけだ。
 あ、カワセミは鳥だっけ。

 ミンミンジワジワツクツクホーシ

 夏休みの真っ只中。私は部活にも入ってない。だから夏休みに学校へ行くのは登校日ぐらい。なのに、私は制服を着て学校に向かう電車に揺られている。
 その原因は昨日。
 友達とカラオケに行ったんだけど、十八時になると同時に教師が乗り込んで来て、強制的に終了させられてしまった。フーエーホーとかで十八時以降は中学生を相手に商売しちゃいけないんだって。つまりどういうことかというと、店側が私たちを客として扱ってくれて、巡回の教師から保護してくれるのは十八時までってこと。中学生は十八時以降カラオケ屋に入店したらいけないらしい。非行防止の一環として条例で決められたことなんだって。イケメンの店員さんが小声で「ごめんな」って言ってくれたのがちょっと嬉しかった。お店を守るためだもの、仕方ないよね。
「お前ら全員、明日学校に来い」
「えー!」
 駅でムリヤリ電車に乗せられた私は、そのまま家に帰るしかなかった。
 お母さんに学校に呼び出されたと言ったら、「じゃあ、お弁当がいるのね?」なんて、なんだかちょっと嬉しそうだった。夏休みは張り合いがないから嫌だと言ってた。

 そんなわけで、今日は呼び出しを喰らっちまったってわけ。夏休みの宿題がどこまで進んでいるのかをチェックされるんだけど、私は全く手をつけてないわけで。