玉ねぎ日和
「試験開始の合図があるまで、問題用紙に触れないで待っていてください」試験管の指示に従い、私は何をするでもなく、ただ目の前の冊子と、持参した尖った鉛筆を見つめる。
この試験で、私の受験生生活に、一つのくぎりがつくんだ。
緊張するでもなく、慌てるでもなく、ぼんやりと、そんなことを思った。
今日、この日のために頑張ってきた。でも、今日がすべてを決めるわけじゃない。
ここ一番の勝負どころというのは、それ自体は大して重要じゃない。
皮でくるまれた玉ねぎみたいに、実じゃない部分の方が多くて、どこまでが皮でどこからが芯なのかよくわからなくて、突き詰めていけば実体なんかない。
重要じゃない部分ばっかりのように見えて、それが一つの塊となって実を作っている。
「それでは、始め」
合図を受けて、ページをめくる。
大丈夫。
私たちが大事にしているものは、玉ねぎと同じような作りになっているのだから。