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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ファントム・ローズ

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「過ぎたことならばいつでも考えることができる。しかし、人間は未来を生きる者だ。未来は過ぎてしまっては未来ではない、今考えるべき未来のことを考えたまえ。そうしなくてはまた過去に悩ませれる」
 今の僕には何かを考える気力なんて少しもない。過ぎ去った過去のことに押し潰されそうだ。
 これから僕に何をしろっていうんだ。自分が無力なことを思い知らされた。僕には何もできない。
 ファントム・ローズの言った次の言葉に僕は自分の耳を疑った。
「還って来れるかはわからないが、椎名アスカはまだ生きていると思われる」
「アスカが生きてる!? 莫迦言うなアスカは僕の目の前で飛び降りたんだ!!」
「真実を知りたいのなら自分で調べるといい。自分の真実は自分にしか見つけられない、それは最終的に判断を下すのは自分自信だからだ」
 そう言ったファントム・ローズの身体がその形を維持したまま全て薔薇の花びらに入れ替わり、上空に渦を巻きながら飛翔して行った。
 ものすごい薔薇の香が辺りに立ち込めた。
 僕は少し落ち着きを取り戻し、そして、改めて決意した。事件の謎と真実は僕の目で見極めると。
 なぜだかわからないけど、ファントム・ローズの言うと通りアスカが生きているような気がする。そう願いたいだけかもしれないけど、少しでも希望があるならそれにすがりたい。
 このまま家に帰るべきか迷った。けれど、これ以上両親に心配させるのもよくないと思った。
 学校を無断で欠席して、結果的にあんなことになってしまった。明日から僕も先生に目を付けられてしまうだろう。
 明日学校に行くべきだろうか?
 学校に行って鳴海に会わなきゃいけない。彼女なら僕の力になってくれるに違いない。そういえば、彼女のケータイ番号聞いてなかった、失敗したな。
 ゆっくり、歩きながら僕は事件を一から整理してみたけど、結局どれも確証がない。
 そもそも消えた生徒たちは全員無関係で自発的に姿を消したのかもしれないし、全部ただの偶然だったのかもしれない。
 でも、僕にはそうとは考えられない。?消えた人たち?・〈クラブ・ダブルB〉・〈ミラーズ〉、そして、ファントム・ローズ。全ては繋がっていると僕は思う。そう考えてしまうのが普通だと思う。
 そんなことを考えていたら、知ってる道に辿り着いた。家はもうすぐだ。
 自宅の前には母親が立っていた。母親は心配が張り裂けてしまったような顔をして、僕を出迎えた。
 両親は僕に何も言わなかった。言えなかったのかもしれない。
 家族に会話はなかった。無言で夕食を取り、誰もしゃべろうとはしなかった。そして、時間だけが過ぎていった。
 夜の深さが増し僕はベッドに入り、目を閉じた――。
 暗闇が僕の心と身体を蝕んで行くような感じに囚われながら、僕は深い闇の中へ堕ちて行った……。